はなたまご

水を抱く女のはなたまごのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
-
映画の原題は”Undine(ウンディーネ)”。話のモチーフがギリシャ神話だと知ったのは映画鑑賞後のことだったが、その知識が無くてもいろいろと考えて重たい気持ちになれる作品だった。
「愛の終わり」というものは神話の時代であれ、現代であれ、人間の精神を試し、ときに魂を失うほどの激情を伴うのだろう。そんな愛憎渦巻く地上と比べ、水の中というのはある意味精神の平穏さの象徴ともいえる。しかし、作中においてそこは薄暗く不気味な場所、そして死を彷彿とさせる場所として描かれる。愛は人間を人間たらしめるが激しくて苦しく、またそれが無くなっても水底のような薄暗がりを漂う人生が待っている。そんな精神世界的な「地上と水中」が、超計画的都市ベルリンという現実世界とも対比され、全体的な映画の世界観ができあがっている。疑問が残る点は作中にいくつかあるが、答えをせがむよりも自分で想像してみるのが良いと思える作品である。