シミステツ

セイント・フランシスのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

34歳と6歳のひと夏の交流。
うだつの上がらない独身女性34歳ブリジットは大学を中退しレストランで働きながら子守りの短期バイトを探す。子守りを任された6歳の少女フランシスとは最初ぎこちない仲。甘いものを買ってくれないからと「ママじゃない助けて」と叫び警察沙汰になるほど狡猾なフランシス。「聞く方が脳にいい」と不躾に本を読ませようとしたり、ブリジットも適当にあしらい返したり。

産後うつや生理、中絶などタブーにも時にユーモアに切り込む。まずレズビアンカップルがカトリックでそこに生理の要素を持ってくるという設定そのものが強い挑戦。避妊も生で外出しとか。生理用品は身体に合うものを選ぶべきってフランシスに言わせるところ、彼氏との中絶、ゴムを付けたがらないギター教室の先生とのセックス。ここまで生理や不正出血、女性の身体をリアルに描写した映画はなかったんじゃないかな。タブー=ブリジット、というような構図の中で、生理も大学中退していわゆるキャリアを歩まないことは決して悪いことでもタブーでもない。現実的に見つめるべきことだし、受け入れてくれる人もたくさんいる。

外での授乳に際してレズビアンカップルに対しての偏見だったりも垣間見えて、でもカッコよく打ち返していてスカッとしたし、後の花火シーンがカタルシスとして上手く機能していた。

ギター教室では才能みたいなことに嫌気が差したり、大学の同級生と再会して体裁が悪かったり、進んできたキャリア、選択についての示唆も多い。

ダンブルドアが死ぬってネタバレされるところは笑った。

フランシスは本当はお姉ちゃんになることで母親に構ってもらえないことが怖かったりしたんだろうけど、ブリジットと打ち解けてから自覚も少し出てきてカッコよかった。

監督のアレックス・トンプソンと主演も務める脚本のケリー・オサリヴァンが私生活でもパートナーというのを聞いて驚いたし、だからこそこうした強いクリエイティブが生み出せたんだなとも納得。
社会的なメッセージが盛りだくさんだったのは良かったけど、個人的には勝手な期待でブリジットとフランシスのバディ的な関係、信頼関係のエモめな描写がもっとほしかった(シーンとしては後半畳み掛けるように描写が増えたけど、心通わせる会話描写が)。最後のハグ、最高だ。

人生も痛みを伴うけど、きっと乗り越えるたびに強くなっていくんだ。そんなひと夏。