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ペルシャン・レッスン 戦場の教室のoooのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

嘘がいつばれてしまうかという緊張感と、架空のペルシャ語を真剣に学ぶ姿の滑稽さの落差がメインかなと思っていたら、それだけではないもっと複雑なストーリーでした。

収容所の中で二人だけが理解できる言語。それは言わば二人だけの世界です。レッスンは、コッホ大尉にとっては一時でも戦争を忘れ、平和な暮らしを夢見る事ができる楽しい時間だったのでしょう。

予想外だったのは、大尉のジルへの激重の感情でした。レストラン経営の夢を語り、幼少期の苦労を語り、食事を提供し、自分の服を譲り、教わった言語で詩を編んで朗読し、収容所から脱出させる。あまりに濃い友情に驚きました。
ジルと過ごす時間に、救いや本来の自分の姿を見出す大尉を不憫にも思った(無自覚ながら、ナチスに入党して大尉として働いている事を悔やんでいるようにも見えた)が、大尉の振舞いは持てる者の傲慢さだとも思った。ジルには、大尉と親しくなる/ならないの選択肢はないのだから。

大尉の幼少期の苦労や勉強熱心な姿、ジルへの友情等に、観ているうちに絆されそうになるけれど、やはり彼もユダヤ人を虐殺した側であり、ジルにとっては決して友人ではなかったと認識させる結末だった。
大尉は本来は悪人ではなかったのだろうけれど、ナチスに入党した事で道を間違えてしまった。ジルと本当の友情を築けるはずもない立場だったし、その事に気付かず友人だと思い込んでジルを信頼していた大尉が浅はかで哀しい。

架空のペルシャ語の詩を朗読するシーンは、滑稽だけどグロテスクでもあった。
始めは咄嗟に名簿の人名から単語を作っただけだったのが、それはやがてジルにとって意味のある行為になったのだと思う。架空のペルシャ語にユダヤ人の名前を織り込む、ジルの同胞への想いと反骨心が胸に響きました。コッホ大尉は死んだユダヤ人を”記憶していない”が、架空ペルシャ語としてユダヤ人の名を”記憶している”という皮肉な展開に、ニヤリとしながらも感動している、自分でもよくわからない複雑な気持ちでした。
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