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GUNDA/グンダのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

GUNDA/グンダ(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

農場の家畜に密着したドキュメンタリー作品。

ドキュメンタリーにしては珍しい、モノクロの映像が目を引く本作。
色が排除された事で、より構図に意識が向き、まるで絵画の様に神々しく詩的なショットの数々に目を奪われました。
ナレーション等の説明がなくても、映像を見るだけで心に訴え掛けてくるものがあって、こんなにもアート性の高いドキュメンタリー映画を見たのは初めてかもしれません。

また、ドキュメンタリー作品として、動物達の営みに密着した映像も新鮮で見応えがありましたね。
例えば、子豚達が親豚の乳を吸う場面。
動物の授乳シーンをこんな長々と見る機会はなかなかないし、貪る様に乳を吸う子豚の姿には言い様のない感動を覚えました。
「生命の煌めき」と言えば、それまでだけど、親が乳を飲ませてくれる人間との違いについても考えさせられたかな。

個人的に面白いなと思ったのは、見ていると動物の気持ちが分かる瞬間がある事。
豚小屋から初めて外に出た子豚が戸惑う瞬間だったり、成長した子豚が親離れ出来ずに乳を求めたり、そんな子豚達を見つめる親豚の優しい眼差しと、その目前で放尿する子豚の構図も最高でしたね。笑
カメラはローアングルで、可能な限り動物に近づいて撮影しているからこそ、見ている方も自然と動物達に感情移入して見てしまうのかもしれません。
そして、感情移入して見るからこそ、ラストで子豚を失った親豚の姿に、深い悲しみを覚えるのでしょう。

単に動物に密着したドキュメンタリーというだけでなく、高いアート性や深いドラマ性も感じられ、もっと言えば、社会風刺や環境問題を考える余地もあって、解釈も開かれている。
「ドキュメンタリーを越えたドキュメンタリー」という言葉が適切か分かりませんが、ドキュメンタリー映画でここまで出来るのかと、驚かされるものがありました。
「豚のドキュメンタリー?モノクロ?」と舐めている人こそ、是非見て欲しい作品です。
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