KnightsofOdessa

シー・フィーバー 深海の怪物のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.0
※昨今のコロナ問題との妙なリンクに変なテンションになっています。
[発狂現象/神話→感染症/学術へ] 60点

直訳すると"海の病気"という意味の題名は、古くからある人魚/セイレーン/クラーケンなどの発狂現象の現代版といった感じの症状を示している。"自分が誰か分からなくなるほど"過酷な労働環境や閉鎖空間などが複雑に絡み合って影響し合い、最終的に死へと導いていく。本作品では発狂現象と責任転嫁、その神話的な側面を感染症と学術として組み替えたSFファンタジー映画である。非常に優秀だが人付き合いは上手くないという典型的な造形の海洋学者シヴォーンが、アイルランド沖での調査航行中にクラーケンのような未知生物と遭遇し、その卵が人間を殺しうることに気付いたシヴォーンは、それを信じない船員たちと孤独なバトルを始めていく。

本作品は2019年のトロント国際映画祭にて封切られているので、その半年後に世界を地獄へと突き落としたコロナ騒ぎとは完全に無関係であるのは明白だ。しかし、『遊星からの物体X』の感染症版として互いの体を調べるなど疑心暗鬼になりながら、"この病気を本土に持ち帰ってはいけない"とする学者シヴォーンと、"感染してるのは接触者だけだ"として帰港しようとする船員たちがバトルし始めるのは現実を見ているかのような感覚にさせられる。裏を返せば、危機的状況に際しても自分に火の粉が降りかからなければ人間とは斯くも自分勝手なのかと思い知らされる。

ただ、致命的なのは"真水に寄生した卵"という設定がどこかに吹っ飛んでいることだろう。動かない船の上で真水の供給が絶たれるのは船員たちにとって文字通り"致命的"なのだが、彼らの船に対する愛着や事務的な部外者かつ"赤髪を船に乗せるな"というジンクスを破って乗せてしまったシヴォーンに対する嫌悪感の方が先に強調されてしまっているのだ。なんか論点ズレてるというか、足りないというか、なんというか。設定が詰めきれてない。

主演のハーマイオニー・コーフィールドは『スター・ウォーズ / 最後のジェダイ』にタリサン・リントラという役で出演しているらしい。
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