藍住

砕け散るところを見せてあげるの藍住のレビュー・感想・評価

5.0
とてもとても誠実な映画だった。
久しぶりに「良い邦画を観た……」という充足感でいっぱいになりながら映画館を後にした。
誰だってヒーローになれる。
愛は時空を超える。

玻璃が清澄と一緒に過ごすようになって笑顔が増え、彼女の世界が広がっていく時、清澄は玻璃の幸せを心から願っている。
そのシーンで流れる清澄のモノローグの優しさに泣いてしまった。
凄惨ないじめのシーンがあって胸が詰まるけどそれに対して絶対にNo.を突きつけて弱者に寄り添い連帯をする人達までちゃんと描いているので凄い。
今年観た邦画そういう弱者を泣ける要素として消費して終わるものばかりだったから心の底から感動してしまった。

清澄の友人役だった井之脇海は『コールドケース』での怪演っぷりが凄くて印象に残ってたけど今作でも素晴らしかった。
彼のこういう演技が観たかったから嬉しかった!
そういえば堤真一が化け物みたいな役を化け物みたいな演技で演じ切ってて震えた。
堤真一、演技が上手いことをすっかり忘れていたので(ファンなのに最近の映画選びがあまり好きじゃないので本当に忘れてた)戦慄した。
そして何より中川大志と石井杏奈がとてもとても良かった。
人を見捨てないという中川大志の力強い眼差しと、少しずつ輝きを取り戻す石井杏奈のはにかんだ笑顔。
二人の何気ないシーンでも泣いていた。
誰かの手を取り合って世界は回り出す。
その瞬間を丁寧に切り取ったこの映画を愛おしく思う。

私が好きな映画やドラマの魂を全部引き継いでて好きとしか言えなかった。
ラストシーンも本当に良かったなあ。
この映画は魂がインターステラーでダークナイトでザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス (ブライマナー)なので、どれかが好きな人は絶対に観た方が良い。
今年の上半期ベストには絶対入れたい。
良い映画だった。
藍住

藍住