織田

砕け散るところを見せてあげるの織田のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ヒーローへの強い思いを感じさせる映画でした。

全編を通じて主人公・清澄の素直さが光り、その素直さは時として、観ているこちらが少し恥ずかしくほどに幼かったりも。感覚としては伊坂幸太郎先生のヒーロー譚と近い気がする一方、勧善懲悪のそれよりも押し付けがましくない印象も持ちます。軽妙といえばいいんでしょうか。

で、映画を観た後に竹宮ゆゆこ氏の原作小説を読んで納得しました。文章のノリが全体的に軽いんですよね。笑
基本的に小説は清澄の一人称で進み、セリフも多い。地の文も清澄の話し言葉なので自分語りが凄い人みたいになっていました。

この映画を観ている時は、清澄がやたら自身の存在感を前面に出してくる(自意識が強い)なぁと思ってたんですが、原作小説読んだら腑に落ちました。温度感をかなり合わせていて、原作へのリスペクトが感じられます。清澄のセリフなんて一言一句というレベルで忠実だったのでは……

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ただ、後半から物語を覆う不穏さ・脅威というスリリングな部分に関しては、原作の方がわかりやすかったかなと思います。父親が玻璃にどんな影を落としているのか、そして玻璃の父親に対して清澄はどう疑念を抱いているのか──この辺はやっぱり小説版が強い。

その代わりに映画は回り道となりうる脚色がなく、終盤のテンポの良さやまとまり方はすっきりとしていました。
加えて石井杏奈が凄い。ラストシーンは本当に最高なんですが、玻璃視点をもう少し見てみたいと思わせる素晴らしさでした。
織田

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