織田

そして僕は途方に暮れるの織田のネタバレレビュー・内容・結末

そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

スケールが小さいのか大きいのかわからない、そんな不思議な映画でした。

目の前の都合悪い状況からことごとく逃げ続け、主人公・裕一が転々としていくのはそこら辺にありそうな温度感の話。行動理由には割と共感する。

基本的に彼はあっさりと部屋をほっぽり出して「行くところがある」みたいに振る舞う。だけどそれって[相手にとって俺はいなくてはいけない存在である]という自意識過剰だったり、自分を受け入れてくれるであろうと信じる甘えだったりするんじゃないのかなと思う。伸二の家でホテルにいるかのような態度を取るのはその最たるところ。

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都度都度で次に逃げ込む当てがあるように、裕一は決して一人ぼっちではない。(ただし人たらしというレベルでないのも事実。電話帳の件数も割とリアル。笑)
で、裕一が駆け込んだ先の親友、先輩、姉、母といった人々の対応が彼のしょうもなさを引き立たせていて、またそれを観客側に証言するような役割も担う。

前半は結構アクセントが効いていて楽しかった。
たとえば毎熊先輩の家では(シンジの家での)失敗経験を糧にして家事をするなど成長(上下関係なだけ?)を実感。
苫小牧に行ってからもそう。ご飯つくってくれるし、家にいるだけでお母さんは喜んでくれるんだからずっと実家いれば良くね?と思わせつつ、お母さんの実態が明らかになってやっぱり逃げ出す始末。裕一くん!!

ただ、豊川悦司演じる親父が出てきてから一気に失速した。至らない男として裕一ひとりにフォーカスされていたのが面白かったのに、家族を捨てた父親(しかもいちいち大袈裟で癖が強い)という要素の介入、さらには裕一の一連の彷徨を「物語」として捉え出したことで興醒め。

加藤(野村周平)は裕一のエピソードを「超面白いじゃないですか」と言っていたけど、それは近い間柄における身の上の近況話だから面白いのであって、映画として成立し得る超面白いストーリーとは思えなかった。(脚色して面白くすることはできると思いますが)

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とはいえ全体的には好きだったところの方が多く、「なんか」を連発して贖罪するシーンは見応えがあったし(なぜ泣く?笑)、伸二が言った「お前はこの一ヶ月少し失敗しただけ」なんていうのは素敵な言い回しだったと思う。

里美がなぜ地元でもない北海道までわざわざ来たかの回収、この期に及んで被害者面してる裕一といった、帰京後の落とし方も秀逸。
それだけに裕一と里美にもっと絞った物語が観たかったなと思いました。
織田

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