Elie

マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエットのElieのレビュー・感想・評価

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マシュー・ボーンの世界は、一線を超えてからが凄まじい。一線を超えなくても最高なのですが、さらに感情をがったがたに揺さぶってくる展開が畳み掛けるのです。本作だとティボルトをあれしたところがひとつそのポイントだと思いました。「SWAN LAKE」なら王子の中で白鳥の世界が幻想じゃなくなったところ、「Sleeping Beauty」ならライラックに噛まれたところ、「The Car Man」ならアンジェロが恋をしたところ、「Cinderella」なら空爆、「DORIAN GRAY」ならドリアンが目覚めだしてから。特にすごいと思うのは、歯車が狂ってゆくというか、掛け違えたところから崩れていってしまうというか、一方は幸福なまま確実にもう一方は破綻してゆくというやつ。この転げ落ちてゆく感じが本当に凄まじくて、気持ちがよくて、切なくなってしまう。そういう構図がただでさえ濃厚なロミジュリが、ただの行き違いを遥かに超えて、(途中からもしやとは思いましたが)いちばん気持ちがズタズタになってしまうことが起きてしまって、圧倒されてしまいました。

口づけしたままのデュエットとか、ラブシーンがとても官能的であり瑞々しくもあり。かと思いきや、精神的に追い詰められるところやティボルトの幻影は恐ろしいくらいで、「The Car Man」を思い出しました。身がギュッとなるくらいの緊張感がありました。

マーキューシオは、途中からこれが彼だとわかりました。マキュを好きな少年のソロパートはスワンに出てくる王子を思い出させたり、女の子たちもそれぞれに性格の表れた表情をしていたり、マシュー作品の登場人物は見ているうちにどんどん愛着が湧いてきます。

New Adventuresが配信してくれている動画を買い切ってDLして、テレビに映して見たのですが、ちょっと処理能力を超えていたのかカクついてしまったので、ぜひ映画館で観たいです。現在上映中である恵比寿の映画館は自宅から遠いのですが(普段ならひょいっと行ってしまうけれど)調べたら、来月に2週間だけゆけそうな場所で上映してくれるみたい。お休み調整して観に行きたいです。

再来週見にゆく予定だった「赤い靴」の来日公演が中止になってしまい、とても残念です。またの機会を楽しみにしています。
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