冬眠

ドント・ルック・アップの冬眠のレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.4
期待通りのブラックなコメディ映画。「政治や経済を運営するシステムは馬鹿で、狂っていて、しかし表層だけはもっともらしく取り繕われていて、それに踊らされる市民」「チキンレースで欲をかいた結果派手にしくじり、システムは崩壊し、その皺寄せは一般市民が被る」的な方向性を地球規模に拡大した本作、どうしても個人的に大好きなマネーショートとの比較になってしまうし、となればフィクションという点で本作のほうがちょっと分が悪い。地球滅亡を前にしたグダグダ感、本当にこんな感じになりそうだなぁとは思いつつ、もしくは彗星は結局マクガフィンでしかなくてまさに今現実に起きている事態の相似だとも感じつつ、故に風刺として非常に巧みだとは思うけども、やっぱりどうしても藁人形論法感が否めない。ただのコメディ映画だったらこういう部分は気にならないのだけど、現実と地続きのテーマでメッセージ性が強い割に戯画化されすぎでは、という気がした。

「真実に目を向ける」という状況をそのまま「空を見上げる」というシチュエーションに落としこむのは面白いと思ったし、そこが一つの見せ場になってたのが良かった。ちょっとクドかったけど。
全体的に謎インサートのテンポ感とかコミカルなやりとりが面白くて、特に「馬鹿な人」として出てくる登場人物のリアルにこっちをイラつかせてくる感じがめっちゃ上手くて最高。まさにこれを期待していた節があるので、その点では満足。
情報量も多そうなので、拾えてないメタファーもたくさんあると思う。これだけコメディに振り切っているなら変にウェットなラストはあり得ないと思いながら観てたので、あの晩餐の温度感と突き放したオチは超好き。

あと、別にこの映画に限ったことじゃないけど、フィクションにおけるSNSのバズり描写って観ててなんとなくむず痒い感じがする。
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