冬眠

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の冬眠のレビュー・感想・評価

3.0
あらすじ一切抜きで突然話が始まったのでびっくりした。そして前提の説明をしなくていい分だけアクション展開がギチギチに詰まっていた。後半に差し掛かり、急に全然知らん強い奴が出てきて、最期は少年漫画としてはびっくりするくらいメソメソした状態で終わった。長編映画として一本筋の通った構成にする気はないのかもしれない。むしろ潔い。

ど頭の墓参りから素人目に観ても気合いの入った絵。総じてアクションとエフェクトが版画というか浮世絵的な質感で、その絵がガシガシ動くのは新鮮で見てて気持ちがいい。観終わったあとギリギリポジティブ寄りの印象を持てたのは、戦闘シーンの質と量の満足度が高かったからに尽きる。

前半は結論が見えてる夢の中シーケンスと目覚めた後の代わり映えしない戦闘シーンで結構ダルい。術破る手段はすげー熱くて良かったけど。後半はアクションとして見応えあるけど、基本的に「しつこい勧誘を断り続ける」だけで話が進展してなくてちょっと笑えてきてしまった。そして、果たして人間の人間性が鬼に打ち勝つような話になっていただろうか。俺には読み取ることが出来なかった。それでもやっぱり、格上に意地で一矢報いる展開は熱い。試合に負けて勝負に勝つ的な決着も好き。

主に主人公がやたらめったら喋るのと、周辺のメインキャラがコミカル方向にカリカチュアされすぎてる感じはやっぱり鼻に付く。絵もセリフも説明くさくて言動もわざとらしいから観ていて食傷気味になってくる感じ。テンポも良くない。終端場は表情が見えないまま無言で身体を震わすあいつの裸体こそ雄弁に思えた。黙ったままのこの人が画面に映ると泣ける(喚き出すと萎える)。

テーマが一貫していないように見えたり、後半の展開が唐突だったり、説明過多だったり、といったイマイチな部分は概ね週刊連載もしくはテレビアニメの流れをほぼそのままの構成で映画の尺に落としていることに起因するように感じる。この辺りは、そもそも「映画的に歪であっても決められた範囲のストーリーを原作に忠実に再現する」といった割り切りがあったのかもしれない。たしかに、変に改変してケチつけられるよりも既に成功しているテレビアニメにそのまま数珠繋ぎで話を追加する方がファンに受け入れられる目算は高いかも。

ルックスはいいけど一本の映画としてみると微妙、という感触なので、これを機にテレビアニメの方を追ってみるのは良いかも、と思った。そして本作も「テレビアニメの最新3話を一気見」くらいのノリで見るべきだった。
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