コミヤ

空白のコミヤのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.6
『ブルー』に続き、またも吉田恵輔大傑作と言いたいところだが劇中の古田新太の台詞よろしく、「モヤモヤ」が残る。それは「モヤモヤ」が無いことに対する「モヤモヤ」。これだけ他者のことは分からないという前提で鑑賞者の感情を揺さぶり続けた最後に、とても分かりやすい劇伴を背景に明確な救いを描いてしまうのは、それこそ鑑賞者の「空白」を補完して、ああ感動したと安心させてしまうのではないのかと。確かにこの救いに対してモヤモヤを感じさせるような言動を古田新太がその少し前にしているとは言え。いやそれでもその後にその感情を松坂桃李に伝えてしまっているというのはやはり少しやり過ぎなのか。。書きながら色々思う。色々思うが、この幕引きは監督の意向というよりも確実に当てようとする製作委員会の意向が強く反映されてるように思えてならない。製作幹事が電通というのも、スターサンズと組んで日本アカデミー賞狙いますよ〜という意思表明なのかと単純な邪推をしてしまう。まあ『ヒメアノ〜ル』もやり過ぎなくらいの救いを示していたので、吉田監督の本意なのかもしれないけど。。前作『ブルー』の方が確実に作りたい映画を作っているという印象。とかなんとかグチグチ言いましたが、めちゃくちゃ見応えあった。分かりやすい救いを求めている自分も確かにいるので、何度も泣いた。一つの出来事に対して、異なる価値観で異なる行動をする登場人物たちの行動原理には、分からないけど分かるという納得感を確かに感じられた。藤原季節の発言と言動の不一致とか、分からないけど超分かる!ところで季節って名前とても素敵じゃないですか?寺島しのぶが一番救われない。溢れたアレを掃除する姿は『犬猿』のぬか漬け作りを連想した。これを見て、すぐに謝ったり感謝したりする自分なんなんだと思った。
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