もつ

空白のもつのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.7
土下座と涙。ほんと、ポスターのまんま。きっつい展開の連続。
精神的にしんどいときに見ると病んでしまう恐れあり。怖いとか辛いとかじゃないんだけど辛すぎて半泣きでずっとみてました。要注意です。
しかしめちゃくちゃ心が動いた。
圧倒的な絶望と、私は"救い"に主題を置いた話だと思いました(諸説あり。


①タイトルが出るまでの冒頭
 事故が起こるまではあまり尺をとらずに事が起きるのですが、、、
あれ…、予告みて想像してたのと違う…。すっごくきつい。またみている人間のリアクションがすごく生々しくて良い。作品内の出来事の発端なので当然なのですが、この丁寧な描写あってこその完成度

②いや~な話し方をする人の声の聞こえ方
 これまた冒頭、みつる(古田新太さん演じる)が娘に吠えるシーン。映画館でみたからこそ、という良さでもありますが、実際にあのトーンで人から怒号を飛ばされたことがある人はきっとわかるはずで、耳にキンキンする不快感が凄い。
 ほかにも、随所にすごくこだわられたであろう、音の聞こえ方が凄いシーンが多々。客観的な音というよりも、その声を聞いている人にとってはこんな不快な音に聞こえているといったような。

③嫌な出来事のローテーション
 嫌な出来事ばかり起こる…。というのがこの作品の基本構造なのですが、決して同じ種類の嫌なことばかりではないのです。ひりひりする感じとか、この場から逃げ出したい感じとか、煮えくり返るような感じとか、、、時として自分が悪いことを受け入れられない苦しさとか。そりゃこんなことの連続だったら人間追いつめられますわ。
 この点において、草加部さん(寺島しのぶさん演じる)の存在感が最強で、MVP(観られた方と語りたいポイント1位。

冒頭で"救い"がテーマと書きましたが、私が特に気になったのは「人は救われようとして救われるというわけではないかもしれない」という点と、「必ずしも、誰かを救おうとしている人が救いになれるわけではない」という点です。

救われたいのに、救ってもらいたくない苦しさもある。
また、救いたいけど救えない苦しさもある。
この作品は、そんな超絶複雑でヌルヌルドロドロした人の感情を丁寧にほじくり返してくれました。後味は意外と悪くないかも。
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