どんとこい侍

空白のどんとこい侍のネタバレレビュー・内容・結末

空白(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

2024年5月、WOWOWで視聴。

まだ垢抜けない女子中学生、繊細なメロディ…始まりがもう不穏なのよ。少女革命ウテナのような、日常から入るとこのあとヤバいことが起きる予感しかない。そして的中する。

あまりにも現実的な事故映像と時の流れで、圧巻の芝居で、ただただ傍観者になるしかない。救われて欲しいとかもない、どうしたらいいのか分からない、全員が闇闇闇。そして周囲から押し寄せる悪意。意味深なカット割りで伏線も見事。

誰もこの片田舎から逃げなかったんだな…苦しいのに追いかけ回されて向き合い続ける日常…誰も自分のこと知らない場所にいけたらどんなに楽だろう?と思った。
多分お父さんはずっと寂しかったんじゃなかったのかな。新しいパートナーが出来た元妻と新しい命、心を開いてくれない娘、仲間に頼らず孤独な海の上、尊敬してくれない子分、それでも意地張って何とかやって来てたのに糸が切れてしまったように思った。最後は「親子なんだな」ってところに落ち着いて、別になにか解決した訳でもないけど少しホッとした。

予期せぬ事が起きた時の人間の行動と感情が多種多様で、見終わってからどっと疲れて泣いた。それくらい古田新太さんが圧倒的ですごかった。松坂桃李さんの葛藤と豹変もすごかった。寺島しのぶさんの好意と押し売りが一体化してる絶妙な気持ち悪さもすごかった。趣里さんの気に入らない子に対する口調や後ろめたさもすごかった。娘を引き取らずあまり関心がないように見える田畑智子さんもすごかった。片岡さんの母親としての姿は古田新太さんとの対比にもなっててすごかった。藤原さんの一見チャラいのに人間の本質を見てる若者の姿もすごかった。
芝居というより「己の空白を埋めるためにそこに生きてる人達」を見た感じ。