しゆ

街の灯のしゆのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.5
レビュー300本目。節目なのでいつか観ようと思っていたチャップリンを代表作の『街の灯』で。
赤塚不二夫先生のイヤミはひとり風の中という話があって、それに物凄く感動をして調べたところモチーフが本作だと知ってチャップリンってすげぇって驚いた思い出がある。個人的にラストシーンはイヤミ〜の方が情緒があって好きだけどこっちももう一つの形で、幸せな気持ちで胸がいっぱいになる。
浮浪者の男が街で出会った花を売る盲目の女性の手術費のために奮闘する…というストーリー。サイレント映画で発声はなく、たまの会話は時々画面全体に字幕の挿入が入る程度だけど顔つきや動作だけで内容は理解できるうえ、それだけじゃなくてコミカル調で各所にふふっとなる笑いを散りばめてるのが凄い。特にボクシングの場面はレフェリーやリングの広さをうまく使いながらのセンスが良い。ギャグ全般にバッグス・バニー・ショーやドリフのネタを彷彿とさせて、映画界とお笑いの両方の原点的な立ち位置でもあるのかなと。さすが喜劇王。
確かに技術があれば表現の幅は増えるけど、面白い作品作りにそれは決して必須条件ではないのが伝わった。人の心を動かすものかはアイデア次第でかなり左右されると教えてくれた。また、男と盲目の女性の出会いのシーンは1年以上リテイクがされたらしく、あまりイメージのなかったチャップリンの作品への貪欲さの一片が知れて良かった。
ラストシーンは憐れみから差し伸べた一輪の花とコインを前者しか受け取らなかったことで男がその人だと分かるのが粋な演出。最後の男の微笑みも良い。
タイトルの『街の灯』は文明の発展の暗喩だとか、本作制作時期がバブル真っ只中でお金や偶像への価値観が揺らぐ中で本当に大切なものは何かっていうチャップリンからの風刺的な見方もできるけど、素直に感動できる話で単に受け止めてもいい。
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