盲目の花売りの娘に恋い焦がれている放浪者チャップリンが、金持ちの紳士を振る舞いながら、彼女の貧しい生活を支援しようとする。トーキー作品を望む声に反発したチャップリンが、頑なにサイレントを貫いていた時分の、スラップスティック・コメディ。
極貧時代を共に乗り越えた母の死去により、絶望の淵に立たされたチャップリンが、母への鎮魂と自らの再起のために製作した作品。実際のところ、自殺願望をもつ富豪の男をチャップリンが諭していくシーンは、自分自身に対するケジメのように感じられる。
金稼ぎのためにボクシングの闇試合に参戦する場面では、まさに最高級のパントマイムを堪能することが可能。一方、パスタをものすごい勢いですする場面は、「すする」という行為を苦手としている、外国人ならではのパンチラインといえる。
ラストシーンに男女の恋愛感情とは別次元の感覚を受けるのは、「チャップリンの愛=花売りの娘の母親としての愛」という方程式を暗に示しているため。ここでの会話は日本語字幕を追うばかりではなく、原語のやり取りにも注目すべし。