ryo0587

ファイブ・イージー・ピーセスのryo0587のレビュー・感想・評価

4.0
ブッ刺さった。好きなシーンが多くて感想がまとまらない。

フラフラも定職に就かず、身籠ったツレの女を置いて逃げ出すボビーが無責任なロクデナシであることは間違いないが、それでも共感する部分が多く、他人事ではない感覚を味わった。

自分が生まれ育ったエリートな生活にも馴染めず、かといってレイのような野暮な女や、彼女が所属する階級や肉体労働にもウンザリして同化することはない。どこに所属することもない根無草になってしまった、ならざるを得なかったボビーの孤独。

大して好きでもない女が妊娠して責任を迫ってくるのは、確かに自分が蒔いた種とはいえ男には(申し訳ないけど!)悪夢でしかない。

レイがボビーの実家に押しかけてきたときの、あの浮き具合と気まずさ、自分の女と家族が決してお互いに心の底からは理解し合えないだろうことがわかってしまう断絶は見ていて腹が痛くなった。こうゆう面倒を負いたくない、逃げ出したい気持ちは理解できる。

キャサリンに請われてピアノを演奏するシーンで、家族の肖像画がゆっくり映されるが、ボビーと家族との不和の歴史を感じさせる演出も好き。

父親に打ち明けるシーンのジャック・ニコルソンの演技には思わず涙ぐんだ。

次の女として抱いたキャサリンに「自分に愛も尊敬もなく、家族にも仕事にも愛を持たない人に、愛を要求できて?権利はないわ」と看破され断られるシーンも辛辣だが台詞が好き。

でも直前まで拒んでたのにあっさり抱かれたシーンは少し動揺した笑。やっぱりこうゆう男がいいのかと。

ラストカット、クレジットが出た瞬間の余韻が苦いが堪らない。ボビーは全く成長せずに逃げ続けるわけだが自分の中にも居るキャラクターになってしまって責められないよ。

冒頭の工事場の夕暮れのなか帰路に着くシーンや実家への旅路の風景も美しくて癒される。

曇天と湿った路面、澄んだ空気が伝わってくるような画のフェチには堪らない
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