きゅうげん

ココディ・ココダのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ココディ・ココダ(2019年製作の映画)
3.5
浅井ラムさんと杉山すぴ豊さんのレビューをみて食指が動いたため鑑賞。
ヒルビリー・ホラー的舞台で偽アダムス・ファミリー殺人鬼に襲われる、タイム・パラドックスもの北欧不条理恐怖映画……って短絡的でてんこ盛りすぎる例えですかね?

含意のある抽象的な演出が目につき、神秘的・幻想的で難解な印象を覚えますが、とはいえ「亡き娘の思い出(の品にキャラクター)に殺されつづける」という大枠の構成は、残された夫妻の苦悩や葛藤を比喩的に表してるといえますし、象徴的な影絵も説明的に機能してるうえ、排尿・金的・青姦などの生理的な要素は、生と死や家族・人間としての営みに直結する見逃せない描写で、衒いなく映画的な芸術表現を試みているといえます。
それにテントや車内という狭隘な、あるいは暗く雪深い森のなかという茫漠なシチュエーションの妙、ミラー越しに映りこむ撮影のワザなど、ホラー表現としても秀逸なものがあります。
エンド・クレジットのリフレインする旋律や合唱、また円環構造のあるオルゴールのデザインなどもニクい演出ですが、発想の勝利ですね。

デジャヴのような正夢のようなそれは夫だけでなく、妻もまた違ったかたちで対峙していることが分かる終盤では、夫妻で同じ悲劇を経験しながらもその対峙のあり方には各々の向き合い方があり、それを理由に相克するのではなく理解して抱擁しあうことで、文字通り解放されるラストにはなかなか心打たれました。
「ココディ・ココダ」の歌にあるような"ずっと真夜中で良いのに"的鬱屈した暗い姿勢でも、やっぱり明けない夜はないと諭すようなクライマックスの影絵は、それだけでも十分にメッセージ性のある素晴らしいアニメーションです。
(Eテレの土曜日早朝とかに流れてそう)

ただ、襲う側も襲われる側もキャラ的魅力に欠けるのが残念。
偽アダムス・ファミリーはまぁいいとして、夫の「15年ぐらい前からタイムスリップしてきたんか⁉」ってダサさがどうしようもねぇ……。