ベビーパウダー山崎

Go Go Tales(原題)のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

Go Go Tales(原題)(2007年製作の映画)
4.0
場末のストリップで鳴り響く激しい音楽、裸のダンサー、その猥雑な状況を冷静に映していくアベル・フェラーラ。リアル感を醸し出すため手持ちでがちゃがちゃと撮ったりはしない、じっくりと音楽に合わせて見せる肉体、顔、なめらかに動いていくキャメラ、大人の映画。
スタッフもダンサーも客もそれぞれの事情を抱え、解決しない問題が次々と起こっては歌と踊りに誤魔化され流れていく。怒声や叫びはたしかにあるが、描かれているのは愛だと思う。オーナーのウィレム・デフォーは博打好き(宝くじで一攫千金を狙う)のクズだが、ダンサーを家族として扱い、裸になる彼女らが表現者として成功することを本気で願っている。金もなくどん底の彼彼女らの希望は絵空事でしかないが、そのありえない夢の一つが叶ってしまうラストの多幸感、宝くじを握りしめたデフォーの周りに駆け寄ってくるダンサーやスタッフ、愛に包まれたこれ以上ないハッピーエンド。混沌であることを受け入れ、できるだけ前向きなフェラーラ映画もまた素晴らしいね。
上映会に参加して字幕付きの本作をスクリーンで見ることができて最高でした(音も強めで良かった)。