はちみつ食べたい

PIG ピッグのはちみつ食べたいのレビュー・感想・評価

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
4.1
ニコラス・ケイジの記念すべき100本目の長編映画出演作品の本作。彼の非常に深みのある演技は、彼だからこそ、主人公ロブの静かな怒りや喪失感、愛を深く映し出すことができたのだろう。まさにオスカー受賞俳優の演技力が光った作品だ。思わずクスっと笑ってしまう本気かどうかわからないジョークのトーンもなんとも彼らしく、久しぶりに観たニコラス・ケイジに嬉しくなった。

また脚本は、ドンパチのリベンジスリラーではなく、物静かで芸術色が強い。悲しみや喪失感、後悔とどう向き合い、暗い辛い過去の記憶をどう受け入れるのか。
時折折り込まれる確信をつくメッセージや、ロブの人生の軌跡を辿りながらも深くは描写されずに淡々と運ばれるストーリーは、少しずつロブという人を詳らかにし、その静かな怒りや孤独、喪失感がじわじわとなんとも言えない強い余韻を物語全体に残していく。
ニコラス・ケイジの演技とこの余韻こそが、この映画の醍醐味なのだろう。