はちみつ食べたい

チェンジリングのはちみつ食べたいのレビュー・感想・評価

チェンジリング(2008年製作の映画)
4.6
今日でも腐敗した組織というのは存在するが、1920年代の警察組織の腐敗っぷりは凄まじい。市民に奉仕する職務のはずが、組織の保身ばかりに走り、守れたかもしれない命が消えていく時間の経過にもどかしさと怒りが込み上げる。

本作の魅力は、なんといっても突出したアンジェリーナ・ジョリーの慈愛に満ちた力強い母親の演技だろう。当時は女性差別も根強かった時代のため、常に控えめで、どんな相手に対しても尊重の姿勢を示す、まさにその時代の象徴的な女性像を演じている。しかし、その目には揺れながらも決して諦めない強い意志がしっかりと宿っており、そのバランス感が絶妙だ。

「希望」とは、時に残酷で儚くて悲しいものだ。そんな希望は持ちたくないと思いつつ、それがなければ絶望しか残らない時、それに縋り、生きる糧にして前に進むしかないこともある。息子を探し続ける母親に救いがあってほしいと願うばかりだった。
本作は95%史実ということだが、実際の事件はより惨虐で映画では少しマイルドになっている模様。史実もの好き、サスペンスドラマ好き、アンジー好きさんは、必見の作品だ。