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PIG ピッグのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
3.8
ニコケイリカバーの流れで未鑑賞だったこれを視聴。

大切な豚(トリュフ探索豚)を盗まれてしまい、豚を取り戻すため、寡黙でのっしりした体躯のニコケイが盗んだ相手を探し突き止めてくという物語。

オーバーアクトなニコケイではなく、渋さと存在感でドラマを語る役者としてのニコケイ、かつてカリスマシェフだったという過去はあれど、ロブ(ニコラス・ケイジ)という人間に過度なドラマや装飾を盛らない画作りとプロット。

口数は少なく、口調もゆっくり、動作もスローモー、少しだけ交流する少年とのやり取りや、トリュフバイヤーのアミールとの会話などから、端々で彼のシェフ人生と人柄がなんとなく伝わってきた。

"食べること、過去の幸福の記憶(幸せの象徴)とリンクする料理"という題材を扱った作品は珍しくないけれど、こちらは『盗まれた豚を取り戻す』というサスペンスの風味がスパイスになってて、静かに淡々とした捜索ドラマの流れと豚の行方が気になって最後まで気が抜けなかった。

序盤にマッシュルームで料理してるロブのシークエンスがあり、終盤にロブの住まい(窓辺でハーブ栽培、乾燥ハーブ、保存食の各種瓶詰め、調理用具、ナイフ)をぐるっと映すところ、飲食業界から去っても、美味しい料理を作ることだけは、忘れ去ることも止めることも出来なかった彼の過去から現在への内面の有り様なのかなと思ったりした。

エンドロールの土を掘る音で、ロブの未来も想像できる、再びトリュフを取りつつ生きてくと思われ。

豚を盗んだカップルに災いが落ちれば良い。

チャプタータイトルのお料理と、2012年物ピノ・ノワール(手頃な価格帯でも1万以上〜)ディナーで抜栓したビンテージらしきワイン(銘柄は不明)といい、やたらとワインとアテが欲しくなる作品。

オレゴン州ポートランドはトリュフ生産地で有名、トリュフ採集は犬を使うことが主流みたいだから、物語はあえての豚なんだなー。