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『青春の気流』に投稿された感想・評価

4.0
素晴らしい!実にいいねぇ、この時代の映画は!
東宝らしくダイナミックだが、父親と娘、若い男女の恋愛、これらのメロドラマタッチは大船調のようで気に入った。
『東京の女性』でガッカリしていたが、『青春の氣流』は秀作と言える。いい映画を観た後は気持ちがいい!笑いあり、切なさあり、情熱あり。

大日向は『隣の八重ちゃん』の頃からするとかなり貫禄が出てきたなぁ。太った…。そして、左顎に深い傷がある。
にもかかわらず、冒頭シーンからクロースアップで彼の顔を映すのだから不思議だ。松竹ならできるだけ傷がある側からは顔を映さず、クロースアップにもしないのではないかしらと思った。
しかし、この冒頭シーンで大日向が「新鋭旅客機説明」をしている時、何度も何度もワイプが使われているが、これは不自然でなんとも汚いワイプである。白いもので剥ぎ取るようなワイプだ。上映当時もこうだったのか、それとも修復の後なのか?不思議な…今までに観たことのない雑なワイプだった。

原演じる積極的な令嬢との夜のデートシーン。原は「疲れてらっしゃるの?私ばかり話してるわね」そして駅が近づくと「あんまり駅が近すぎるのね」これには笑えた。
画面は淡いシーンで四隅は程よくぼやけてまーるく二人を描きだしているように見えるのだが…どうなのかしら?

山根演じる小市民の物静かなお嬢さん。彼女との出逢いは、ある夕立の日。喫茶店で雷を怖がり耳を塞ぐ彼女を見て一目惚れ。それ以来、大日向と山根はいつも同じ時間に同じ席でサイダーを注文。喫茶店のウエイトレス三人娘が、「あの二人恋人同士よ!」とジーっと見ながら楽しそうに可愛らしい会話。彼女たちは彼女たちなりに気を利かせ、二人が来るといつも同じレコードをかける。「ん?またあのレコードだな?」と大日向はニコニコしながら言う。三人娘はレコードに関して「男の人は鈍感だから気づいてないけど、女の人の方は気づいて恥ずかしそうに下向いてるわ!」笑
食い違っているがそこが面白い。「どうしたんです?疲れてるんですか?僕にばかり話させますね」笑
原と同じことを言う大日向。山根はこういう役が合うね。松竹で言うと桑野通子に似ている。戦後の映画では、面長のイメージが強いが、この頃は面長には見えないなぁ。大人しそうで綺麗なお姉さん。
大日向は、快活に話しタバコに火をつけ吸う。彼はもう彼女に夢中なのだ。

大抵、古い映画は縦に傷が入り雨が降っているようだが、この映画はなぜか斜めに雨が降っている笑
映像状態は良いので気にならないが、斜めもあるんだな笑

喫茶店シーンからわかることは、大日向はいつもサイダーに口をつけ、告白するときはゴクリと呑み込む。山根はいつも口をつけずに俯き加減。胸がいっぱいで飲めないのか、それが当時の女性の嗜みか。いやおそらく、積極的令嬢原との対比だろう。原はピアノを弾くシーンが何度か映るが、一つは横から撮っているので、まさに本人が弾いているようだ。彼女はピアノが弾けるのか!
原は大日向の留守中に部屋に入り隠れている。白い花を持って来ているのだ。冒頭の夜の駅までのデートシーンで「薔薇のいい香りがするわ」と原は言ったが、大日向は「僕には少し強すぎます」と言っていた。原を家へ帰した後、原が持って来た花束よりも大日向は航空機の図面を見入る。そして白い花束が邪魔だと寝転がったまま隣の部屋へ白い花束を放る。夜なので電球が灯っているが、隣の部屋は暗いはずだが、その白い花束にはスポットライトが当たっている。この一連の大日向の行為が、彼の心理描写なり。つまり、彼の頭の中では令嬢よりも飛行機なのだ。
娘の結婚話を大日向にする原の父親の後ろには白い花。大日向の後ろには華やかなものはない。お互いこの話をするときに動揺して、タバコケースやら灰皿やら、卓から落とすのが面白い。
しかしこの映画、恋愛話だけではない。宮崎駿の『風立ちぬ』はこの映画の模倣かしらと思うような、飛行機設計図を書く熱い男たちの演出もあるのだ。目先の利益だけ考えていてはいけない。今は時間とお金がかかっても未来のためになる仕事、常に前進がなければならぬ…なるほどねぇ。

山根が家の事情もあり結婚に躊躇しているとき、弟がその話をまとめてくれるわけだが、彼は戦地へ旅立つのだ。お姉さん思いのいい弟だ。軍人の行進シーンや陸軍の隊列飛行など、そういったシーンが挿入されるのは、やはり戦時中を思わせる。

結局、原は失恋し、ただひたすらにピアノを弾いているわけだが、この時、ピアノの上に白い花の入った花瓶はなくてよかったのではなかろうか。せめて、いつもとは違うという演出をして欲しかった。白い花が枯れているとか萎れているとか。

大日向と山根の恋愛もうまくいき、大日向が場面転換のときにキャメラに向かって声を出し合図する、すると、ドキュメンタリーのような飛行機製造工場のシーンに切り替わり、そして試験飛行となる。

結婚披露宴では、原も笑顔で拍手を送り、ラストシーンは新婚の二人が飛行機の中から窓を見て「ほら、あれが君の嫌いな雷様になる雲だよ」みたいなことを言い、「あら、もう大丈夫よ。雷なんて怖くないわ、あなたの飛行機に乗っていれば」だったかなぁ?こういった感じで終幕。めでたしめでたし。
黒澤明脚本初の映画化作品でもあり、伏水監督の遺作でもある作品。

航空機開発の話に、会社の派閥争い、ラブストーリー、友情がうまく盛り込まれている。

新しい航空機の開発をプレゼンする伊丹。

パイロットの村上は大きな拍手と共に賛成するが、竹内専務や橋本設計部長は良い顔をしない。

伊丹は由島専務の家を訪れると、色々な理由はあるものの、竹内、そして橋本は由島と対立しているから、この計画に積極的ではないとの事。

また、伊丹は馬淵美保という女性と何度も喫茶店でデートをして、結婚しようとしているのだが、かたや由島は娘の槙子と結婚をしてくれないかとお願いされる…

色々なテーマがとても綺麗に描かれていて、観賞後に清々しい気分になれた。

個人的には終始前向きな藤田進演じる友人と、中村演じる槙子の行動力のある弟が良かった。

あと和やかな喫茶店の場面が好き。
期待せずに観たら戦時色はあるにせよ秀逸の作品であった。何しろ脚本が良いと思ったら黒澤明とのこと。この時代に英語が現在と同様に日常会話に使用される。技術者、技術と科学の論争や製品化出来るか不安に思う資本家の心理を良く表現さしている。消極となまこは嫌いだ!やはり戦争の影響か。原節子が美しいしプロポーションが見事。22歳。ピアノを弾く令嬢は戦前映画の特徴。しかし失恋する設定 はこの女優の実人生と被る。男同士の紛争を紳士的に誠実に戦う姿が気持ちが良い。秀逸の作品。
文献が多い。

https://www.nfaj.go.jp/program/toho202209-51/

https://nihoneiga1920-1960.hatenablog.com/entry/2019/12/31/113836

https://www.ss.i.ryukoku.ac.jp/ka/category/523.html

http://images2.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-a87c.html

https://sasurai.biz/0009047.html