Inagaquilala

セルジオ テロに死す -イラク復興を託された男-のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.7
ネットフリックスのオリジナル映画「セルジオ 世界を救うために戦った男」(2020年)の基となった2009年にアメリカで製作されたドキュメンタリー作品。監督は同じグレッグ・バーカーで、これもサマンサ・パワーの評伝「Chasing the flame: Sergio Vieira de Mello and the fight to save the world」が原作となっている。ドキュメンタリーなので、もちろんイラクで爆弾テロに倒れた国連人権高等弁務官のセルジオ・ヴィエラ・デ・メロ本人が映像として登場している。テロ現場での救出の模様を中心に据え、セルジオの過去を振り返るという、映画と同じような構成をとっている。ただ、回想の部分は、映像そのものではなく、多くは関係者の証言によって語られている。セルジオの恋人であったカロリーナも証言者の1人として登場しているし、原作者のサマンサ・パワーにも取材している。

「セルジオ 世界を救うために戦った男」の映画でも、実際のセルジオが少しだけ登場していたが、こちらでは本人の映像がかなり多く使われている。こうして見るセルジオは、親族の1人が作品中でも「まるでジェームズ・ボンドみたいだ」と語っているように、颯爽と国連の代表として世界を駆け回り、そのうえ女性からも注目される紳士で、むしろ映画より自分には格好よく映った。それにしても、10年越しに、このセルジオを、今度はドキュメンタリーとしてではなく描いたグレッグ・バーカーの彼に対する思い入れには感心する。このドキュメンタリーではセルジオとアメリカ政府の関係を微妙なものとして描いているが、10年後の映画では、はっきりとイラクに対するスタンスの違いを描いている。そのあたりが、あえてもう一度、映画としてセルジオを描いた理由かもしれない。
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