Punisher田中

TITANE/チタンのPunisher田中のレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
5.0
子供の頃に交通事故に遭ったことで、頭にチタンプレートを埋め込んだアレクシア。
その影響で車に性欲を見出すようになった彼女は車の展示会でストリッパーとして働いており、ファンから告白されるほど人気を博していた。
一方、プライベートでは両親との関係はうまくいっていないもののそれなりにごく平凡な日常を過ごしていたが、そんな彼女には人には言えないある衝動が渦巻いていた。

歪に生きてきた者達の歪な愛の形を見事に描き切った衝撃的な作品だったし、鑑賞後こんなにも疲れた作品は恥ずかしながら初めてだ...
同監督作の「RAW」同様に妙でリアルな痛々しいグロ描写は健在だが、それ以上に人間臭さを徐々に醸し出していく主人公・アレクシアの魅力に取り憑かれ、最後までスクリーンに釘付けとなることは必死。
今までジュリア・デュクルノー監督は""人が別の何か""に変容する作品をデビュー当時の「JUNIOR」から描いていたみたいだが(鑑賞は出来ていない)、今作もチタンの様に冷たい女・アレクシアがとある出来事をきっかけに"別の何か"に変容していく過程が描かれており、体の変容だけでは無く、心や生き方、人との接し方も変化していく様は次第にメタンの様に冷たく平たい板の様なシンプルさを持ったアレクシアが愛という熱(言い方がクサいなw)によって人間の形を徐々に徐々に成していくようだった。

ただのグロ映画、見掛け倒し、設定倒しなんかでは一切なく、痛みと殺人でしか自身を表現できないアレクシアをグロ描写のみで語っては、複雑ながらも隅から隅まで練りに練られた上質な脚本に圧倒され、余白と""熱""に拘った美しい画面構成はストイックを極めた者のみが創り出せる、どんな凄惨な場面でも見てしまう美しさと信念がそこには込められている。
歪な道を歩んでしまった両者の歪な愛はいつしか美しく純粋な愛の形に変容を遂げ、その愛の形が垣間見えるフィナーレはどう受け取るか観客に任せている所も余韻を程よく残してくれる。
最初から最後まで過激で優しく、焼かれては冷水をぶっかけられの繰り返しでとてもエクストリームな映画体験が出来たと思う。
実際、凄すぎて鑑賞後は全く立てなくなってしまい自分でもビックリしてしまったが、ハマればそれくらい衝撃的な映画体験をすることが出来るし、鑑賞後は半日くらい「凄かったけどもう観なくていいかな」と思っていたが、1日経つと「あのシーンをまた観たい!余白の取り方が気になる!」と観たい欲望に駆られてしまう二郎系ラーメンの様な作品でもあった。
相当なメンタリティとグロ描写への耐性を要求されるが、観れる方には是非劇場で体感してもらいたい、途轍も無い破壊力を持つ作品だった。アレクシアだけでなく鑑賞者でさえもキャッチコピーの通り「壊して生まれる」そんな作品だった。
鑑賞した方は是非語りましょう!!!!!!!!!!