Jun潤

TITANE/チタンのJun潤のレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.7
2022.04.06

予告を見て気になったものの、なんだか怖い雰囲気が…。
しかし第74回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞したということでこの度意を決して鑑賞です。

交通事故による怪我の治療のため頭にチタンのプレートを入れた女性アレクシア。
過激なコンパニオンとして働く傍ら、自分に寄ってくる男女を殺害するサイコキラーと化していた。
ある夜の行いから体に異常が出始めるアレクシア。
両親ごと実家を燃やし、逃亡した先で無理矢理顔を変えたアレクシアは、消防隊隊長のヴァンサンから息子のアドリアンであると勘違いされ、奇妙な共同生活が始まる。

いやー、めちゃめちゃ目を背けながら観てましたが結局最後まで目が離せませんでしたね。
前半はボディ・ホラー×サイコ×スリラーな感じで、そのままのテンションで行くと後半に向かっての落差が激しく困惑を感じざるを得ませんでした。

しかしそれぞれの演出要素が対比していることに気付くとなるほどなと感嘆するし、終始張り巡らされたオカルティックな雰囲気の最高潮を常に更新し続け、どんどん物語にのめり込めらせる構成には脱帽ものです。

アレクシアが突然なんの感情の動きもなく人を殺すサイコと、目の前の命を救おうとするヒロイックさ。
自他関わらず体を傷付ける痛々しいボディ・ホラーと、アレクシアが愛を知りヴァンサンがありし日の息子の姿を求めるハート・ウォーミング。
アレクシアが次に何をするのか予想がつかない恐々とするスリラーと、自信を持って息子と断定するヴァンサンと半端な偽装工作で隠し通そうとするアレクシアのシュールさ。

そして作品を黒々しく塗りたくるのは心臓を直接震わせるかのような重低音。
その不快さでもって今作の雰囲気を統一していた印象です。
それにカメラワークや一つ一つの描写もまた不気味さを加速させこちらの恐怖を煽るものばかり。
今作を思いついた人が一番ヤベェ。

ありし日の息子を妄想で補完し続けたヴァンサンはアレクシアの体をついに目にしたことで自分に火をつけた。
偽りの自分になり、容姿を大きく歪ませ、異変ごと体を締め付けたアレクシアは再び車の上で魅惑のダンスを踊る。
そして、いつからアレクシアは人でなくなったのか、人でないアレクシアと人ならざるものの間に生まれたのは、姿こそ人間の赤ん坊だが、その背中には…。
“サイエンス”・フィクションでは言い表せられない、“怪異”的な作品。
Jun潤

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