るか

TITANE/チタンのるかのネタバレレビュー・内容・結末

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ただのエログロではない芸術性って言えばいいのかわからないけど、109分という近年の映画では短い部類なのに重厚感がある作品だった。

・怪演?狂演?超演?
主演の演者さんの演技がスゴすぎる。本当に1人で全部演じているのか疑問にに思うほど。細かい動きの違いだったり、メイクの差、表情の異なりで作品を通して性別がどんどん変わっていく。最初のオープニングの長回しは緻密に計算されたショットで、こう良くも悪くも「女性」を十分に前に出してくるショーガールとしての主人公。かっこいいし美しい。あんまり前情報を入れてなかったのでいきなり耳に串刺しでびっくりしちゃったけど笑
そこからの主人公の金属への愛情描写は普通に文字だけ並べたら笑ってしまうけど映像で見るとそんなことは全くない。普通にそういう行為を見ている感じになる。ここら辺の見せ方が上手いなと。
また1番の主人公の見せ場は消防車の上でのダンスのシーンだと思う。ここは本当に感動した。目の前であまりにも自然に流動的に性別の変化が起きる。上に立った瞬間と音楽に乗り出した瞬間本当に演じ分けがすごい。このシーンだけでこの作品を見た価値があったと言っても過言では無いかも。この直前で父親にはバレて限界突破してるからこそのこのダンスなんだろうけど、こうやって女→男→?→女、とジェンダーの壁を視覚的にも物理的にも超えまくる主人公は見てて新鮮で興味深いものだった。

・歪な父子関係
行方不明の息子と偽って転がり込んだ「父親」は「息子」を愛する人。最初から主人公は女性だと気づいた上での「息子」としての扱いだったのか、それとも車の中の涙や、喋らないことへの指摘のように本当に息子が帰ってきたと思ったのか。僕は最初警察署で顔合わせした瞬間から息子ではないと分かっていた派ですが、そうじゃない可能性も全然あるんじゃないでしょうか。ただ形上での「息子」に依存してしまったり、過去の栄光にすがろうとする(ステロイド注射など)シーンなどありますが、「たとえお前が何者であろうと息子として愛す」という言葉は中々響くものがありました。

・撮り手側の上手さ
鏡の使い方が最高。いちいち「うわぁそれいいなぁー」って口走ってしまう良さ。
男性として受け入れられていく主人公の妊婦姿を鏡に映し出して現実を突きつけたり、「老い」を父に突きつけたり。
また、序盤の情報量は脳みそがバグるんじゃないかってくらい多いし突飛なものばかりだが、丁寧に計算されてさりげなく情報が配置されているので見づらさは全く感じなかった。字幕の関係で強調されてしまうのが残念。
また、所々にある引きの画角は全部パソコンのスクリーンセーバーにしたいくらいの美しさ。と思いきや素晴らしい画質でのアップは息を飲むほどこれまた美しく、寂しいものがあるし....とシーンごとに語りたいけどそんなことをしていては夜が明けてしまうので書くのはこれくらい。下記の恐怖もありますが美しい芸術性の高いカメラワークを見るためにもう1回見てもいいなって思うし、間違いなくこの作品の底力をあげている必要不可欠な要素のひとつ。

・暴力よりも怖いもの
殺人シーンもリズミカルに殺していくから心構えはある程度必要だけどそこまでグロ前回じゃないからいいけど、ラストシーン含め妊娠系のシーンは全部恐怖。掻きむしる音は不快極まりないし、何が生まれるんだ?という恐怖もある。

ビビっって劇場で見に行けなかった作品、早い段階でUNEXTに出てくれたので嬉しかった。これを大画面で強制的にぶっ通しは中々きついものがありそう。(自分は休憩入れつつ見ました)
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