根岸

トランスフォーマー/ビースト覚醒の根岸のレビュー・感想・評価

3.5
全体的に「既出」のシーンが多かったことは否めないし、ベイ監督作品のような、脳に焼き付く鮮烈なアクションシーンもなかったように思う。
だが、今までおざなりになっていたサイバトロニアン達と人間の交流を丁寧に描き、"Till all are one"という作品テーマとバトル描写を一体化させることに成功している点で、シリーズ内でも特別な価値のある作品となった。
トランスフォーマー初心者におすすめするならまずコレです。おすすめです。

TFファンとしては、
「トランスフォーマーが動いて喋って戦ってる姿が大画面で見られて最高!!!!!」
という感想に尽きます。

まず、オプティマスが「未熟というわけではないが完成されていないリーダー」として描かれていることが新鮮だった。この話は彼の成長譚だったと思う。その成長が、人間との交流、そして未来の後継者の姿からもたらされる、という構図が良かった。
特に後者は、「未来から来た後継者に、過去の未熟な自分が導かれる」という構造になっていて、とても気に入った。
プライマルは遠い未来の進化したトランスフォーマーだが、トランスワープキーにより異なる時空の地球=過去の地球へ来訪する。未来では、オプティマスは伝説的なリーダーとなっており、プライマルは彼にちなんだ名前を持っている。オプティマスの武勇伝をたくさん聞かされて育ったのだろうし、彼を偉大なリーダーとして崇敬し、目指してきたのだろうということも想像に難くない。
そしてプライマルは、時空を超えて出会った未熟な「過去」のオプティマスに、「未来」のオプティマスから自分が学んだ理想を伝える。この、時間の円環を通じて理想が手渡される、という部分が、『クラウドアトラス』や『X-MEN: フューチャー&パスト』を思い出させて、グッときた。

また、最終決戦に向けて繰り返される"Till all are one"という言葉が、実際にノアとミラージュが合体するという形で実現されているところも良かった。
他のアクション映画ではメカスーツはよくあることなのかもしれないが、トランスフォーマーにおいては、皆無というわけじゃないけど意識のあるトランスフォーマーとの合体、という形でしっかりと描かれたことはなかった、と思います。ここ訂正お願いします。

他にもノアの家族を守りたい気持ちと、オプティマスの仲間を守りたい気持ちをシンクロさせて描くなど、納得しながらドラマを追うことができた。いい映画だった。

ただ、テラーコン達はいまいち魅力を発揮しきれていないように感じた。ナイトバードの剣技が大写しになるシーンもなく、バトルトラップの特徴的な頭部が闇の中で輝くシーンもないし、仮面の下のスカージの素顔にも特別な驚きはない。
実写TFではディセプティコン派なので、テラーコン達にもかっこよさを求めすぎているのかもしれない。でも最初の「うわこのスカージとかいうヤツ仕留めた相手のインシグニア肩に貼ってるよ!!やべぇ~!!かっこよすぎる~!!!!」という興奮を、その後の描写が超えられなかったのが残念だった。
特にスカージの素顔に関しては「別時空のオプティマス、もしくはメガトロンの成れの果てである」ということを示唆しても良かったのではないかと思う(元ネタ的にどちらも可能ですよね)
…もしかして、実際そうなんだろうか。それとも「顔すら継ぎ接ぎの、もはや個性を消失した哀れな存在である」という表現だったのだろうか?
ここだけ腑に落ちませんでした。
根岸

根岸