耶馬英彦

ジョン・ウィック:コンセクエンスの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

4.0
 キアヌ・リーヴスは質素な生活をしていることで有名だ。ケチなのではなく、収入の多くを他人への施しに使っているかららしい。ホームレスと話し込んだりすることもあるようで、キアヌの世界観の深さが窺い知れる。俳優としてよりも、人間としてとても興味深い人物である。

 さて本作品はアクションを楽しむ娯楽作である。主席と主席連合と侯爵という悪役の組織に理解し難い部分はあるが、要は権威と権威のせめぎあいである。
 真理の前には権威など意味を成さないのだが、それは精神世界の話で、現実の利益の奪い合いでは、権威が物を言う。黒を白と言い張っても、そこに権威が伴っていれば、いとも簡単に道理が引っ込んで無理が通る。まさに理不尽だ。
 その理不尽に立ち向かう孤高の存在として、ジョナサン・ウィックが設定されている。キアヌ・リーヴスにピッタリの役柄だ。持ち前の戦闘能力と、タフな精神と肉体を駆使して、権威と対決する。

 本作品はアクションとカメラワークが工夫されている。戦闘の場所や戦い方、撮影の仕方に様々なバリエーションがあって、飽きさせない。ジョナサンは得意の拳銃の他に、ナイフ、ヌンチャク、敵のアサルトライフル、そして体術と、状況と相手によって様々な技を駆使する。トレードマークはローレンス・フィッシュバーンのキングから提供されたスーツで、ジョナサンの不死身の秘密もそこにある。
 馬と自動車とオートバイ。どれに乗っても様になるが、トム・クルーズのネイサンのような能天気さはなく、どことなく悲壮感が感じられる。それがジョナサン・ウィックだ。

 娘の伏線が気になるが、最後の最後できっちりと回収される。くれぐれもエンドロールで席を立たないことだ。
耶馬英彦

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