KnightsofOdessa

Trilogy(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Trilogy(原題)(1969年製作の映画)
2.0
[カポーティの短編三部作] 40点

『泳ぐ人』などで有名なフランク・ペリーが唯一カンヌでコンペに選出された作品ながら、例によって例の如く五月革命によって上映されなかった作品。本作品はトルーマン・カポーティの三つの作品を関連無く並べ、題名まで降参して"三部作"としている。老齢で仕事を失くした家庭教師ミリアムを描く第一部"ミリアム"は、見知らぬ少女ミリアムが老ミリアムに付きまとう話である。老ミリアムは公園で子供に話しかけたり、カフェで相席になった見知らぬ人に話しかけたりと、コミュ力最強の老女であるが、身寄りのない彼女にとってのそれは自身の存在証明のようにも聴こえて悲しくなる。そんな老ミリアムの静かすぎる生活を騒々しく破壊していく少女は『赤い影』に出てくる娘、或いはその幻覚のようにテカテカな真っ黄色のコートを着て登場する。VHS画質でも分かるテカテカ具合が、どうしてもローグの同作を思い出させる。それらの決的的な違いは、少女は本当に老ミリアムの幻覚であり、孤独が作り出してしまったイマジナリーフレンドにすぎないということだ。あまりにも悲痛だし、少女の死んだような顔は中々に不気味。

第二部"楽園の小道"では、妻の墓に花を添える壮年の男と彼に話しかける女性を描いている。妻の横に自分用の墓石があり、そのテカテカの表面に自分が反射している(しかも女性が映っているという意地悪さ)不気味なショットは面白かったものの、全体的には動きがなさすぎて退屈。一点、海外の墓のイメージとして"鬱蒼と生い茂った木々"というのがあったんだが、本作品に登場するのは青空、ちょっと丘、遠くにビル群とめちゃくちゃ明るくて驚いた。

第三部"クリスマスの思い出"は、カポーティの短編の中でも最も有名らしい。少年時代に叔母の家で過ごしたことを思い返す話。タイトル以上のことが起こらない点に息が詰まるが、これは"厳格な家に嫌気が差して、ちょっとはみ出し者扱いされてる親戚に憧れる"という経験が私の中で黒歴史になっているからだけなんだろう。

第一部の少女だけは忘れたくないが、全体的に大味で、多分明日には観たことすら忘れてそうな薄さ。短編三つが関連し合うならまだしも、貼り合わせただけってのはどうも気に入らない。
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