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ザ・ファイブ・ブラッズのjonajonaのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
3.9
スパイクリーほど思想を前面に出してくる監督もそうそういないだろうと思う今日この頃…。もう全然実際の映像を合間合間に挟み込むことに躊躇はないし、断続的に主人公たちの過去の戦闘シーンも差し込まれて画角が変わる。どこが実写か見失うことはないけどやや混乱しつつ、リー監督はどこが実写かなんて意識して欲しくないんだろうなーと感じる。
いや、ちょまて、隣の部屋の野郎めちゃくちゃうるせー!どういう声で喋ってんだ音量アホなんこいつ!?

…とまぁ、前置きはこのくらいで。

思想を前面に出しつつも、社会派としての格調高さよりもエンタメとして間口を広く取り腰を落として観客に向き合う姿勢がやっぱり好きだなと思う。

本作は自分たちを『ファイブブラッド』と呼び合う最高にイカしたベトナム帰還兵の5人の黒人達のお話なのだが、其の内の1人は戦争時に既に死んでいて、何十年の歳月が経ち彼の亡骸を回収しにいく(と同時に戦時下で隠した金塊の回収も)目的でかつての戦場に戻っていく…
ことになるのだが、主人公たちを待ち受けるかつての幻影は次第に4人の絆を狂わせていき…というお話。

○すぅき
・あらすじが好き。かつての戦場に舞い戻る…て時点で血湧き肉躍るよなぁ?えぇ?

・ベトナムに着いてからのバーのシーンでの複雑な心境とか、旧知の友人が現在のアメリカにおけるトランプ支持者になってる事を知りみんなが顔を顰める展開とか、単純にその後の物語のための下ごしらえ以上に現実世界との地続き感のための下ごしらえになっていて素晴らしい。
僕もフィリピン行った時ああいう若い人がお金要求してきたことあったなー。さもお前らには払う義務があるだろ?という感じで、不思議な気持ちになった。
かつての敵兵たちと同じバーでのんびり酒を飲むってどんな感覚なんだろうね。

・息子が1人ついてきたことで過去の出来事ではなく現在と地続きの継承のお話にもなっててその点がみごと。
息子さんの綱引きシーン()は中々他の作品で見たことない展開で、本当にあんな事できるのかは別にしていいアイデアだと思う!

・心が病んでしまってる父親の彼周りの描写はすべて中々いい。どんどんマクベス的に増長してきて次第に暴力で場を仕切ろうとしだす様を怖くてしょうがない。
しかしそれより息子の為に命を救って、その直後人を平気で殺そうとしたりと…戦場に戻ったことでかつての自分と父親の自分の乖離に苦しんでる表情がかなしげで素晴らしかった。

○ベトナムの風俗描写はどこも中々見応えある。

○きぃらぁい
・やや冗長が過ぎる。ながぁい!

・過去編でも主人公たちを本人が演じてるのでジジイと若者(かつて死んだリーダー的存在だった5人の1人)がタメ口で喋ってるのに納得いかねぇ。ご愛嬌の部分だけど違和感満載。

・後半の展開がなおざりになってる気がする。スパイクリーがやろうとしてることに対して考えるとやや物語的すぎる。悪の親玉みたいにジャンレノが登場するのは楽しいけど、そもそもそういう話でハリウッド的に終わらせる題材なのか?というどうでもいい疑問が湧く…

・ラストのあの2人にピントが合って背景がグーっと後ろにスライドしていく描写…あのトレインスポッティング描写。
あれ前にもリー監督の何かで見たけど怖いんだけどアレ!?笑

p.s.ボーズマンさんに追悼の意を。
そんなギリギリの状態で本作に挑んでいたとはニュースを見るまでついぞ知らなかった。素晴らしい演技でした。
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