ぶみ

アオラレのぶみのレビュー・感想・評価

アオラレ(2020年製作の映画)
4.0
デリック・ボルテ監督、ラッセル・クロウ主演によるスリラー。
渋滞でクラクションを鳴らした美容師の女性レイチェルが、男から執拗に追われる姿を描く。
カレン・ピストリアス演じるレイチェルを追い回す狂気の沙汰としか思えない男をクロウが演じており、基本的には、私のベストムービーであるスティーブン・スピルバーグ監督の『激突!』同様、追う者と追われる者という至ってシンプルな構成。
正直、監督やピストリアス含め出演者についてはクロウ以外知らない名前ばかりであり、加えてB級感たっぷりな邦題から、クオリティが心配だったものの、カーチェイスやクラッシュシーン等々にCGの安っぽさは一切なく、ノンストップ・スリラーとして十分満足いくものであったため、杞憂に終わることに。
『激突!』では、顔の見えないトレーラー運転手が不気味さを倍増させていたが、本作では冒頭クロウ演じる男の異常さが描かれ、以降普通に登場している。
しかし、そのバックボーンとなる異常さの詳細は一切語られず、クレジットでも役名が「Man」でしかなかったように、名もなき男として登場していることが、日常は常に恐怖と隣り合わせであることを教えてくれる。
クルマ好きとしては、ボロボロのボルボ940(960かも)エステートを追いかけるザ・アメリカなピックアップトラック(フォードF250かな)という、実にわかりやすい構図が堪らない。
原題が『Unhinged』と、ヒンジが外れたという意味から転じて不安や錯乱、発狂といった意味合いの単語であるのに対し、実は殆どあおり運転のシーンはないにも関わらず、カタカナで『アオラレ』とした邦題は、あまり適当ではないものの、時流を掴むという意味では何ともタイムリーなものであり、個人的にはアリ。
知らぬ間にストレスが溜まりつつある現代社会において、沸点が低くなっていることに警鐘を鳴らすとともに、クラクションを鳴らしたくなったら、アンガーマネジメントとして6秒間数えたくなる秀作。

人に謝ることができなくなってる。
ぶみ

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