ちろる

太陽がいっぱいのちろるのレビュー・感想・評価

太陽がいっぱい(1960年製作の映画)
4.0
アランドロンの美しさをひたすら愛でるための作品。
たくさんの太陽の光が彼の精悍な身体に降り注ぐ。
けれど、所詮まやかしで手に入れたその光は永遠に降り注ぐはずもなく、一時期の栄光にしか過ぎない。
でもそうせざる得なくなったトムの複雑な感情があの頃の幼い私に理解できるはずもない。

かつて淀川長治さんはこの作品を「ホモセクシャルの作品」と書いたそうだが、この作品を表面的に観ただけではもちろんそんなことは全くわからない。
原作には2人の関係が同性愛的要素がある事を仄めかしているようだけど、もちろんそれも説明がなければわからない程度だという。

ただ私はこの淀川さんの文章を先に思い出してこちら再鑑賞したせいで、ところどころのトムのフィリップへの混沌とした想いが見て取れるメタファーに一喜一憂した。
特にトムがフィリップの格好をして真似をするシーン。
追い出されてマルジュを独り占めするフィリップに嫉妬するように見せかけてはいるが、鏡の中のフィリップにキスする姿を見れば実はトムが心の奥で欲しがっているのはフィリップなのではないかとも思うと、尚更その幾重にも複雑に絡まる演出には鳥肌がたった。
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