やや

あのこは貴族のややのネタバレレビュー・内容・結末

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

同じ階層の人間としか話さないと、なんとなくその世界に違和感や不満を感じてもどうにかしようとも思わないものだよね。
華子と美紀は仲良くなるわけじゃない。かといって羨んだり妬んだりもしない。お互いの言うことを無理に理解しようともしない。ただ何かを感じて少しずつ影響を与えていく。
タクシーしか使わない事は悪ではないけれど、徒歩だからこそ見える景色もあることを華子は初めて知る。

幸一郎は絶対悪いやつなのに私なら騙される自信ある~!!と思いながら見てたら根が悪いやつではなかった。ごめん。笑
「俺はまともに家を継ぎたいだけだよ、それは夢とか展望じゃなくてそういう風に育っただけ。華子が俺と結婚したのと一緒だよ」
悪意なくさらっと放たれた言葉は彼の貴族としての"当たり前"の価値観を如実に表していて良かった。
褒め言葉にもなり得る「こんなにまつ毛、長かったっけ」。このたったひと言に全てが詰まっていて、決別の決め手として視聴者も納得できる。すごい。


「どこで生まれたって、最高って日もあれば泣きたくなる日もあるよ」
「でもそれを話せる人がいればとりあえず充分じゃない?旦那さんでも友達でも」
「そういう人って、案外出会えないから」

大きな事件もなく淡々とそれぞれの「そういう風に育っただけ」を映しているだけなのに退屈でもつまらなくもない。私には縁遠い貴族の生活を興味深く見れたのもあると思うけれど、台詞や雰囲気や構成が巧みなのだと感じた。
鑑賞後に「良いものを観たな」と静かにじんわりと心に染み込んでくる作品でした。
やや

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