Jun潤

タミー・フェイの瞳のJun潤のレビュー・感想・評価

タミー・フェイの瞳(2021年製作の映画)
3.6
2022.04.17

第94回アカデミー賞にて主演女優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した作品。
ジェシカ・チャスティン×アンドリュー・ガーフィールド。
ジェシカ・チャスティンは製作にも名を連ねる。
かつてアメリカで放送されていたキリスト教テレビ番組『PTLクラブ』に出演したジム・ベイカーとタミー・フェイを描く。
日本では劇場公開されず、Disney+にて限定配信。

幼い頃よりキリスト教徒として育ったタミー・フェイは、大学でジム・ベイカーと出会い意気投合、すぐに恋に落ちる。
間もなく夫婦となり、深く愛し合い、伝道師として活躍するようになる。
やがてテレビの世界に進出し、人気を集め、多忙を極めるようになる2人。
しかしその道の先には、ジムの焦燥やジムに相手にされないタミーの苦悩が待っていた。
夫婦は金や権力と、イエスの愛との間で揺れ動いていく。

神や人を信じ抜いた先には何があるのかー。
宗教の伝道という現代の日本では馴染みの薄い事柄について、ドキュメンタリー調に一組の夫婦の時点で描いていく話。
宗教的なことはよくわかっていませんが、性善説だとか無償の愛だとか夫婦の絆だとかについてはよくわかるし、成功から没落までの人生の物語で見応えがありました。

20世紀後半の話なので現代とはまた違ったいわゆる炎上の様相でしたが、当時っぽさも出しつつ、これがもし現代で起きたら、と想像を掻き立てる作りをしていました。

金や権力に覆われ、自身もまた寂しさから不貞を働いたものの、信心深く他者を想い続けた2人の結末としては幸せと言えるものではなく、少々苦味の残る終わり方でした。
やはりせめて、「信じる者は救われる」世界にもう少し近付いてもいいのかななんて思ったり。

物語的にはそうでも、ラストのエンドロールで現実の登場人物達について言及があり、それでも前に進み続けた事実があったことがせめてもの救いですね。

演技ではやはりなんと言ってもメインのジェシカ・チャスティンとアンドリュー・ガーフィールドですね。
どちらも最近の作品や個人的な思い入れでアクション俳優のイメージが強かったのですが、今作では愛し合うことと教えを説くことなどの間で揺れ動く様が表れていました。
また、歳をとるにつれて壮年になっていく様や年月を経てもなお世間の信頼を得ようと偶像として見た目を維持していこうとする様がメイクにも出ていて、こりゃ受賞もするわという印象です。
Jun潤

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