アキラナウェイ

タミー・フェイの瞳のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

タミー・フェイの瞳(2021年製作の映画)
3.7
ジェシカ・チャステインの女優魂。

特殊メイクだけではない。
声色や笑い方や立ち振る舞い、そして歌。

タミー・フェイご本人を存じ上げないので、似ている・似ていないはわからないけど、とにかく別人に見えるんだから凄い。

1970年代から80年代にかけて、キリスト教福音派のテレビ伝道師として全米で最も成功を収めたタミー・フェイ(ジェシカ・チャステイン)とジム・ベイカー(アンドリュー・ガーフィールド)夫妻。しかし、スキャンダルの発覚により、夫妻が築いた帝国はやがて崩壊していく—— 。

良くも悪くも、ジェシカ・チャステインの厚化粧とキャラの濃さとその歌唱に圧倒される。

アンドリュー・ガーフィールドも素晴らしいけど、何せジェシカの存在に霞んでしまうかなぁ。

学生時代にジムと出会った頃から晩年までを見事な演技で演じ切っている。

"PTL(People That Love)クラブ"という彼らのテレビ番組では、福音を呼び掛ける愛にあふれた彼らのメッセージが反響を呼び、番組中は視聴者からの"献金"を受け付ける電話が鳴り響く。

TV通販番組と何ら変わらんじゃないか…。

献金の不正利用。
ジムの性的スキャンダル。

何でも自分達の都合の良い様に神様が仰っていると思えば大違い。自らの欲と野心を神の御心と見誤った者達の栄光と挫折。

不思議と信仰と富とは両立しない。
金の無心に走る宗教はまずもって碌でもない。
これは世の中の真理だと思う。

しかしタミーという人物の何が凄いって、きっと(ジムはわからないが)彼女は、一点の曇りもなく、全てが神の御心で、神の愛が万人を救うと信じきっていた事だ。

ある意味ピュア。

でもだからこそ、彼女の奇抜なメイクも歌唱も何処か滑稽で、可笑しい。

落ちぶれてしまった彼女がラストシーンで立った舞台。其処には彼女1人だけなのに、タミーの瞳にはコーラス隊が自分の歌声に幾重にも美しいハーモニーを重ねてくれる姿が映る。

Glory,Glory,hallelujah.

栄光あれと歌う彼女はともすれば惨めに見えるかも知れない。しかし、彼女の瞳には神の栄光が燦々と輝いて見えるのだ。

あくまで、彼女の瞳には…。