ちろる

イングリッシュ・ペイシェントのちろるのレビュー・感想・評価

4.1
広大なリビアの砂漠に導かれて、禁断の愛に身を委ねた男女の物語と、イタリアの修道院で密やかに戦争の終わりを待つ看護師と男たちの生活が異なる時間軸で描かれる。
戦争は、悲恋を積み重ね、残された者を救いきれぬ哀しみのどん底に閉じ込める。
いっそのこと、愛する者と同じ苦しみを味わいながら同時に死ねた方が幸せだったのだろうか。
しかし残された者にはそれらの悲劇を語る義務がある。

私は不幸を呼ぶ女だと自分のことを語ったハナと、自分のせいで愛する人を失ったと
キップとハナのデートのシーンがたまらく好きで、どうかこれ以上悲劇が起こらぬようにと本気で祈った。
ハナがキップに見せてもらう壁画のシーン、オレンジ色のリビアの燃えるような砂漠の風景、汗を纏いながら身体を貪るキャサリンとアルマシーの姿や、最後の時間を過ごす泳ぐ人の描かれた洞窟のシーンまで、この柵にの何から何まで美しく、暗い戦争の最中であっても世界はこんなに美しいのだという事を思い知る。
激しさと切なさとその両方で観ていて何度もかき乱されるけど、美しく厳しい砂漠の景色とともに、観た後いつまでも余韻を残す作品でした。
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