なちゅん

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のなちゅんのレビュー・感想・評価

3.9
鉄の女と呼ばれたサッチャー首相と、1人の女性であるマーガレットの生涯を描く物語。
晩年のマーガレットは認知症を患い、夫・デニスの死さえも忘れてしまうのに、首相時代のことはありありと覚えているというその姿、メリル・ストリープの名演が光っていて、口調や振る舞いの演じ方の違いにため息が出るほど。

夫の死を忘れてしまうのは薄情さではなく愛故で、いかにデニスが彼女を支え続けていたのかを物語るものでもあると思った。
食料品店の娘であり、一女性であり、母であり続けながら、激動のイギリスを率いたリーダー。「鉄の女」と称されようと、そうしなければ主張さえ聞いてもらえなかった彼女にとって、いつもそばで支え続けてくれたデニスがどれだけ心の拠り所となっていただろうか。
君なら1人で生きていけるよ、今までもそうだったじゃないか、と去るデニスの幻影と、カップを洗いながらまたその姿をどこかに探すマーガレット。彼女は遺品を片付けてデニスを送り出すことで、「1人で生きていける女性」に戻ったのかなと感じた。

最晩年の彼女が、せめて穏やかな日々を過ごしたことを祈らずにはいられない。

若きデニスを演じたハリー・ロイド、眼鏡姿が素敵でした。大好きな名作家ディケンズの子孫なんですって。好きになってしまうわ。
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