ぬーこ

青春の殺人者のぬーこのネタバレレビュー・内容・結末

青春の殺人者(1976年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

原作 中上健次「蛇淫」
監督 長谷川和彦
脚本 田村猛
音楽 ゴダイゴ「憩いのひととき」

中上健次原作と聞いて。
彼のテーマである血族、父母との対立。

映画の場面構成が良かった。父殺しの場面を最初出さなかったり、でも母との壮絶な場面はすぐ出てきて、最後にやはりテーマの父への憧憬や憎悪といった複雑な思いにフューチャーしつつ、父殺しの場面を出したり、憧れの父のアイス売りの場面を出す。

時代背景を感じる。
全共闘、成田闘争、帰還兵の父、戦後無一文からアイス売りで身を立てた父、父との対立。
その時代を経験していたら、共感したのだろうか。両親との対立と無縁の世代から見れば罰当たりな奴だと思いつつ、若さにのよる反抗というのも分かる気がする。

父は成功し、生き方もスナックもすべて与えられた。何一つ自分で得たものはない順。その中で唯一自分で選んだ恋人、ケイ子とは別れろと迫られる。それが1番の深層心理の中での動機だったのではないか。

ケイ子の無花果の話(ケイ子は無花果を盗んだからからぶたれて、左耳が聞こえなくなったという。)を興信所を使い、嘘だと指摘する父。(実際は母の連れてきた男に手込めにされて、それを母が知って殴られた)ついに順はカッとなって父を刺殺してしまう。父は正論なのに正論を言われたが故ゆか。
 
主人公・順(水谷豊)の粗暴さ、無感情さと感情の起伏の激しい母(市原悦子)のコントラストが面白い

ケイ子のことで、両親と対立する順
不穏なサイレンの後、母が帰宅すると父は包丁で刺され死んでいる。終盤になって父を殺した場面が出てくる。
現場に立ちすくむ主人公と母の掛け合い。
母の行動が面白い。
殺した息子、殺人者がいるのに、父に話しかける母。死がようやく分かると息子に警察に行くなと言う。これはうちの家族の問題。南無阿弥陀仏と唱える。母の切り替えが怖い。

ウーウウーと念仏のようなバックミュージック。

母との格闘シーン、そして最後の痛いよー!の断末魔がえぐい。夢に出てきそう😱大学行って、大学院行ってと死際に言う母。当時の価値観がよく表れている。
「15年我慢して、お嫁さんもらって、大人しい素直な」「(外のカタツムリ見ながらあぁ、はい!(死んだことに気づき慄く)」

○シーン
冒頭の原田美枝子の身体が美しい。胸がとても綺麗。

両親を殺し、父からもらったスナックをめちゃくちゃにしようとする

父との相撲。和解シーン
願書を破いたことを謝る父、全共闘の時代だったから。

高校生の時に作ったフィルム、磔。
父母との対立。磔にされたヒロインを救い出し、父を磔にする。でも物語の最後は順達は負けて、脱出した父達に笑われる。

聞こえないケイ子の左耳に向かって、両親を殺したことを告白。橋桁を外し、ケイ子から去っていく。


長谷川和彦っ評価の高い監督なのね。調べなら長谷川への提供脚本の没作品として龍のコインロッカーベイビーズが出来たって知らなかった。

○セリフ
こんなにある血の分量
拭くだけじゃ間に合いはしない
私は嫌だ。お父さんが死んであなたが死刑になるなんて嫌だ。法律なんて嫌だ。

死んだ夫に)あんな海が好きよねえ?

2021.88
ぬーこ

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