オオハラメグ

Summer of 85のオオハラメグのレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
3.7
完全にポスターのデザインにつられて観たのだけど、入場特典でクリアファイルを貰えて嬉しかった。
オゾンの作品はいくつか観たことあったけど、その中でも好きな方かも。
画がとても綺麗だったし、登場人物のファッションも全部素敵で真似したくなったな。

享楽主義で自分に正直なダヴィドと、少し頑固なところもあるが純朴で可愛げのあるアレックスの恋愛模様だが、冒頭で本人から提示される通り、これはアレックスの物語だ。
その物語を通じて私たちが出会えるのはアレックス以外にはいないし、その現象を起こすのが他でもない純粋な恋心なのだと思う。
これはベンヤミンのニコライ・レスコフ論に出てきた物語作家の話に近いことが言えると思った。
物語を語ること、またその空間を作り出すことは経験の交換に近いものを演出できるという話だが、結局経験も主観的なものだなという感じがする。

あまりにも純粋な恋慕の念を抱いてしまうと、相手を求める気持ちは強過ぎるあまり終着点を失ってしまうのかも知れない。
そして恋愛に限らず人と人の関係には、自分と相手との主観の異化に目を背けたくとも背けられない物寂しさは常に存在しているような気がしてならない。

周りが見えなくなるまでに真っ直ぐな想いから犯してしまった過ちは果たして本当に過ちなのか、"感情は主観"という当たり前を無視して相手を信じ込むのは罪なのだろうか、と色々と考えてしまい、自分の思考の癖に無駄に疲れてしまったな、、、

物語の終わりに、「私がアレックスだったらどう思っただろう」と考えていた。これは鑑賞する私たちの物語でもある。
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