あくとる

アナザーラウンドのあくとるのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
"人生に0.05%の輝きを"

16歳から酒を買えるデンマークの酒文化にまず驚く。
日本よりも酒が身近な存在だからこそ生まれた作品だろう。
飲酒が人生にもたらす効果について考える非常に面白いドラマだった。
また、マッツ・ミケルセンのアイドル映画としても最高。

"中年の危機"真っ只中の冴えないおじさん高校教師4人が、「血中のアルコール濃度を常に"0.05%"に保てば人生が上手く行く」という仮説を体を張って検証する。

前半は酔っ払いコメディとして単純に笑える。
演技にしろ演出にしろ、過剰じゃないちょうど笑えるバランスが見事。
微笑ましいおじさんたちの姿に、観ていて思わず酒が飲みたくなってくる。
酔いで授業が面白くなり、家族愛も深まる。
酒が人生を豊かにするのはたしかだ。

しかし、人間はその先を求めてしまう。
後半はビターな展開。
良くも悪くも酒は人生を大きく左右させる力を持っている。
だからこそ、適度な距離感を保って酒と付き合っていかなければいけない。
それを常に肝に銘じて、酔いを楽しむ。
検証は彼らの人生に何をもたらしたのか。
軽やかさの中に重みも感じさせるドラマ。
ラストはマッツのダンスで爽快に締める。

とまぁ、丁寧な人物描写の素晴らしいドラマなのだが、その一方ではマッツの魅力が満載のアイドル映画でもある。
ホロ酔いで涙を浮かべたり、気が大きくなっていきいきとしたり、おじさんたちでふざけ合ったりと、とにかく様々な表情の彼を楽しむことができる。
役柄上は"冴えないおじさん"なのだが、いやいやどっからどう観てもセクシー過ぎるだろう。
程よく枯れた大人の色気が駄々漏れ。
マッツファンなら堪らない117分。
男の自分も惚れました。