Nori

アナザーラウンドのNoriのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.0
人間は、何かに依存して生きている。どんな人でも。
治療を要するような、脳の機能にダメージを与えるようなモノ(アルコール、薬物、sns、セックス)に限った話ではなく。
生命の安全のために、子は親に依存せざるを得ないし、仕事をする事で社会と繋がるという意味では、職業人は仕事に依存していると言えなくもない。

本作でも、アルコールの負の側面ばかりではなく、正の側面もあることを重層的に描いている。物質は毒にも薬にもなる。それをコントロールするのか、コントロールされるのか、の違いがあるのみ。
その境目は曖昧で、どこからが彼岸なのか分からないし、ある人にとっての正解は、他者にとっては取り返しのつかない、三途の河の渡しになってしまう。
先進国では自己責任の範疇にされるのだろうが、上手く乗りこなせる人は多くないから、社会問題になるんだよなぁ。パチンコとかも、セルフコントロールできなくなる人間を囲って産業が成り立っている訳で。

ただ、そのダメさ加減が(多くの場合)人間の人間たる所以で、だからこそ愛おしいのだろう。
主人公夫婦の揺らぎも、正解じゃないと感じる人は少なくないだろうが、何が正解か、分からないのが人間関係の複雑怪奇な、だからこそ面白く苦しいところ。

正解を描かない、真っ当な作品で良いな、と感じた。
Nori

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