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FLEE フリーのbluetokyoのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.3
2025年2月24日 0:45~ Eテレ 字幕
終盤までは、まるでカフカの不条理小説みたいなドキュメンタリーとは思えない感じだった。たしか、ドキュメンタリーだが、アニメにしないと身バレして、命の危険があるからアニメにしたんだっけ。理由はそうであったとしても、アニメにすることによって、なにか、不条理の度合いがかなり強まったように感じる。難民という存在の不条理さだ。いったいなぜ難民が存在しなければならないのか、ということだ。

簡単にあらすじ。
ドキュメンタリーなので、本来ストーリーはないのだけど。と前置きしておく。主人公、アミンは、航空機?パイロットを父に持つ一家の次男として、アフガニスタンで、普通に暮らしている。父親がパイロットなので比較的裕福な家庭だったのだろう。流行りの洋楽を聞いたりしている。
ところが、突然、政変が起きて、父親は、なにものかに連行されてしまう。
長男も徴兵で連行される危険があったので、いち早くヨーロッパへ亡命した。
さらに、母親とアミンたち兄弟は、観光ビザでロシアへ。だが、その先は難民の壁で、立ち往生してしまう。
アフガニスタンに戻るわけにもいかないので、ロシアに不法滞在者として滞在を続ける。
集合住宅の一室にこもってテレビを見るだけの生活だったらしい。
たまに警官が来たり、捕まったりするが、警官の目的は、賄賂なのだ。カネさえ払えば、問題はないわけだ。
で、カネは、ヨーロッパにいる兄が、たぶん、送金してくる。

まず、姉二人がヨーロッパへ脱出。コンテナに積み込まれ、海路ヨーロッパへ。酸欠で何人もが死亡するも、姉二人は無事にヨーロッパへ脱出成功。次いで、アミンと母親が、ヨーロッパを目指す。船の船底に積み込まれ出航。だが、途中で航行不能になり、浸水も起こる。大きな客船に助けられるが、エストアニア?に送還される。さらにロシアに送還されるが、ロシアの役人や警官は、賄賂でなんとでもなるので、結局、もとの生活に戻る。
大型客船に救助されたとき、難民側は、必死になって、おーい、助けてくれーと手を振る。客船の乗客はそれをカメラで撮るわけだ。アミンは、突然、耐え難い屈辱を感じた、ということらしいが、とても、リアルだと思う。
つぎは、もっと高額だが、ましな運び屋に依頼する。運び屋にもランクがあるわけだ。ということで、アミンは、無事、ヨーロッパに脱出した。

このさきは、いかにもドキュメンタリーである。
アミンには、たまたま豊かな才能があり、さらに運まであった。たちどころに、なにかの学者になって成功を収めるわけである。
成功したからこそ、こういうドキュメンタリーに、自分の難民ネタを提供しようという気にもなったわけだ。にわかに生々しくなってくる。

たとえば、なんの才能も運もないその他大勢の難民は、ヨーロッパに辿り着いたとしても、ただの、低賃金のエッセンシャルワーカーになるしかない。これでは移民と同じだが、移民との違いは、移民は、受け入れ国の要請に基づいているわけだが、難民は、それがないのだ。

命の危険から脱出する自由が、いつの間にか、成功する自由にすり替わってしまう。それでも命を脅かされる毎日よりはましなのだろうか。
ドキュメンタリーでなければ、そこまで深く掘り進まなければならないと思うのだけど。
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