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スパイの妻のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.5
黒沢清監督による2020年のNHKテレビドラマの(サイズや色調を新たにした)劇場版で、濱口竜介と野原位が黒沢とともに脚本を担当したサスペンス映画。
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞。
(2020, 119分)

1940年太平洋戦争前夜。
神戸で貿易会社を経営する優作(高橋一生)は満州に渡った際、"関東軍が細菌兵器の開発をし、捕虜を使った人体実験を行っていること"を、偶然知る。
国家総動員法による思想統制が強まる中で、"コスモポリタン"を自認する彼は、正義のためにこの事実を明るみに出そうと密かに計画する。
何も知らない妻の聡子(蒼井優)だったが、幼なじみで聡子に好意を持つ陸軍憲兵の泰治(東出昌大)から、ある女性の殺人事件で事情聴取を受けたことをきっかけに、夫に疑惑を持つ…。

その後の展開は見てのお楽しみ。
最後に、終戦(19455年8月)の翌年と数年後の二人についてクレジットが入り、作品に余韻を与えます。

「私は一切狂ってはおりません。ただ、それがつまり、私が狂っているということなんです。きっとこの国では」

劇中に1936年(昭和11年)の山中貞雄監督の「河内山宗俊」の一場面が登場します。

黒沢清監督のベスト作品と言ってよい。
主演の蒼井優と高橋一生も好演。
医師役の笹野高史も味がある。

なお、先の戦争で南京事件と並び、日本軍が行った二大恥部の一つと言える731部隊に関しては、青木富貴子「731 石井四郎と細菌戦争部隊の闇を暴く」(新潮文庫)を一度手にとってみることをおすすめします。
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