半兵衛

スパイの妻の半兵衛のレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
2.5
人体実験とか憲兵による拷問とかハードな内容を取り扱っている割には、結局夫婦をめぐるメロドラマに着地するのでモヤモヤする。私としては開けたパンドラの箱をどう処理するのか期待していたのに、夫婦の愛の駆け引きにされるなんてガッカリだぜ。戦争に関するバックホーンもリアリティのないものばかりなのも興醒め、確かに戦争を知っている人が描いたスパイのドラマ(『アドルフに告ぐ』や『ブラックブック』)に比べて戦争を経験したことのない人が手掛けるとどうしても夢物語になってしまうのは仕様がないとしても何とか考証を頑張ってほしかった。あと主人公の甥にあたる坂東龍汰があんだけ秘密情報の確保に頑張ったのに、蒼井優に目的のため犠牲にされるのがあまりにも不憫すぎる。そのあとのフォローも一切ないし…。

主人公の高橋一生や妻を演じる蒼井優、看護師の玄理の昭和10年代の空気を持った演技や、憲兵を演じる東出昌大の不気味な演技が見事。あとほんのちょい役で出る佐藤佐吉が妙に目立つ。

所々表れる演劇的な表現が息苦しく感じられる、特に秘密の情報を夫婦でべらべら喋って説明するところだったり、後半の蒼井優の演技がまんま舞台のテンションあげた芝居なのには苦笑する。

黒沢清特有の「いないと思ったら突如画面に現れる登場人物」が効果的に使われていたのは面白かった、蒼井優が東出昌大に取り調べられる際、突然ほかの憲兵たちぬっと顔を出すところはちょっとホラー。

クレジットでその後をくどくど説明するラストも不満。
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