荒野の狼

マイ・バッハ 不屈のピアニストの荒野の狼のレビュー・感想・評価

3.8
ギターやヴァイオリンのウエストにくびれのあるカタチ(シェイプ)は、女性のボディを模したものだと聞いたことがある。だとすれば、それを抱えて曲を奏でるという行為はまさに愛撫のそれである。演奏者の手や指の技巧が、感動的な音楽を生み出すのだ。少々不届きだが穿った話だと思う。
天才ピアニストであるとともに彼が普通に女たらしだという逸話には、何か納得できるところがあって興味深い。ときに優しく、ときに激しく愛されれば楽器にとってそれは至福というものだ。ピアノは弦楽器ではなく打楽器ではあるが、彼に連打される鍵盤は、その形状にもかかわらずまことにエロチックじゃ無いだろうか?スタインウェイ、時にベヒシュタイン、フリッツ・ドッベルト。世界を巡りながら各国の名器を弄(いじ)り回した彼もまた至福の人生だっただろうことは想像に難くない。指ギプスまでしてプレーする姿はバイアグラで頑張るオヤジを思わせ悲惨ですらあるが、老いても指揮者として勃(た)ち、ブラボー!
荒野の狼

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