Masato

コリアタウン殺人事件のMasatoのレビュー・感想・評価

コリアタウン殺人事件(2020年製作の映画)
4.0

統合失調症体験ムービー

制作スタッフの情報一切なし。監督も脚本も主演も名前がない。久しぶりにここまでのファウンドフッテージを出されたら、少し信じたくもなる。パラノマールやクローバーフィールド並に情報統制がしっかりしていて楽しませてくれる。殺人事件は本当らしい。

リアリティを演出するが故に、あまり劇的な展開もなく、進みも遅いため、映画的には退屈することもあるが、全編にわたる、撮影環境の劣悪さや、主人公の精神疾患?からくるとてつもない不快さと、幻想か真実かわからないゾワゾワする奇妙な感覚、マジで本当のやつなのかもわからないような出来栄えは、この上ない快感でもある。オカルト好きは、本当に堪らない。

殺人事件の記事↓
http://www.koreadailyus.com/wife-murders-husband-in-koreatown/

↓↓以下ネタバレ↓↓






最後の注意書きを翻訳すると、こういった文章となっている。

本作で描かれているストーリー、ほとんどの名前、登場人物、事件などは架空のものです。 使用されている実在の映像や解説の使用については、製作者が様々な権利を主張していますが、実在の人物(生死を問わず)と正確に特定することはできません。 実在の人物(生死を問わず)、場所、建物、商品などを正確に特定するものではありません。 この映画の制作において、いかなる動物も被害を受けていません。 この映画やその主張が実在するものであると信じる合理的な人はいないでしょうし、陰謀論者や地獄の火事場の伝道師のパロディ/批判以外の何物でもありません。 このプロジェクトやその主題についての調査は厳しくお勧めしません。 見つけるものは何もなく、ただの映画です。

つまり、本作はフィクションであるが、殺人事件自体は本当のことである。つまり、実際の殺人事件を利用して描いたモキュメンタリーであることが分かる。

おそらく、主人公は統合失調症を患っていると思われる。その理由として、とある人物と行動が似ているからである。

動画サイトで迷惑な行為を自分で撮影して投稿している「aiueo700」というユーザーがいて、統合失調症を患っているらしい。度々よくわからないことを言ったり、被害妄想があったり、町中で叫んだりしていて、本作の主人公と行動パターンがすごく似ていた。

aiueo700の統合失調症は、なんとも思わなかったものが、こうしてストーリーでなりきったように没入感をあたえて、ホラー・アトラクション的な要素を加えると、本気でここまで怖くなるのだと驚かされた。世にも奇妙な物語を見たあとよりも、100倍くらい怖さがあって尋常じゃない。不安と不快からくる本当の怖さは格別で、ちょっとこれは普通じゃない。
情報規制から、事件のチョイス、演出もかなりよくできていて、見たあとも家の中歩くだけで不安になるくらいに怖い。統合失調症の怖さを体験できる。製作者もそこを意図して作ったのだと思う。被害妄想ってこんなに怖いのか…それを味わえただけでも、秀逸な作りであるし、傑作。

この事件の被害者の夫の顔がマジで怖い。無表情で、解像度が低くて、見ているだけで不安になるような顔立ちをしている。それが怖い。それと、音楽が本当に怖い。不安にしかならない。ああ身の毛がよだつ。
Masato

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