骨折り損

もう終わりにしよう。の骨折り損のレビュー・感想・評価

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
4.3
もしも彼が、綺麗なお顔をしていたら。

本当に酷いことを言っているのは承知の上だが、個人的に観賞後ふと浮かんだ言葉はこれだった。

お世辞にもイケているとは言い難いジェイクと綺麗な女性。二人がどんな風に出会ったのか、はたまた本当に付き合っているのかさえ、結局のところは分からない。そんな曖昧で不安定な二人の会話をひたすらに聞く2時間と少し。

奇妙なことが次から次へと起こる。物語がどんな着地点を描くのか、全く想像さえもできない。まさに吹雪の中を走る車の如く、先が見えない。ただそこにいるのは男と女。それだけ。

正直、途中退屈してしまう瞬間も多々あった。どこに向かうのか分からないまま場面の変わらない映像に苛立ちを覚えた時もあった。それは、助手席に座る主人公の気持ちに近かったと思う。やっと、少し違う景色が現れても、予想もつかない展開に、謎がまた謎を呼んで何も解決はしてくれない。さらに不安は募るばかり。

これはかなりストレスフルな作品だ。だけど、目が離せない。センスを感じるカットの積み重ねに、これは傑作だとの期待を常に持ち続けてしまう。

結果、これは傑作だと思った。
僕は凄く好きだったが、他の人が好きになってくれる自信は本当にない。僕自身も全てを理解して好きとは言っていない。ただ、なんとなく好きだった。たまらなく。

会話ばかりの映画なのに、これほどまでに映像表現で魅せてくれる作品は珍しい。会話の使い方が、説明のためではない。テーマは映像でしっかりと伝えていた。
なぜ、彼らは二人でいつまでも運転しているのか。なぜ外は吹雪なのか。一つ一つに意味が込められている。

また雪が降ったら、車を出そうか。
骨折り損

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