ノラネコの呑んで観るシネマ

新しい街 ヴィル・ヌーヴのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

新しい街 ヴィル・ヌーヴ(2018年製作の映画)
4.3
シブい。
1995年のフレンチカナダ、ケベック独立を問う住民投票を背景に、思い出の海辺の街ヴィル・ヌーヴで再会した、元夫婦の過去・現在・未来を描く物語。
全編がモノトーンの墨絵調アニメーションで描かれており、変幻自在の表現が、全て夫婦の心象描写となる仕組み。
これレイモンド・カーヴァーの短編小説がベースなのだが、同じくカーヴァーにインスパイアされた「バードマン」あるいは「ラ・ラ・ランド」を思わせる、虚実を混濁させるユニークな仕掛けがある。
決して取り戻すことのできない、後悔や歯痒さの残る過去は=現実。
しかし未来に希望の鐘を鳴らせるかどうかは、今現在にかかっている。
思い出に囚われ「新しい街」という名の過去に生きる男と、わずかな光を未来に見る女の物語は、後悔と希望の間を行きつ戻りつしながら揺れ動く。
白と黒の世界で描かれる、いぶし銀の人間ドラマだ。