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祖母の部屋のdm10foreverのレビュー・感想・評価

祖母の部屋(2020年製作の映画)
3.0
【Jホラーの現在位置】

ちょっと前にレビューを書いた『Z.N.』とかと同じ「ショートホラーフィルムチャレンジ」の受賞作品の一つ。

まあ、新進気鋭のクリエーターの方が作るショートフィルムなので、製作費やキャストを考えれば「頑張っているな」っていう感じは伝わってくる。

やはり尺が限られている以上「恐怖の原因」や「その正体」について深く掘り下げるような時間はないので、どうしても「起きている現象」だけを描くことになってしまうんだけど、「日本のホラー」ってここまであからさまに「オカルト現象」だけをピックアップしても実はそれほど怖くはなくて、もっとひたひたと迫ってくるような不穏感だったりとか、何もせずにただいるだけなのに不気味といった「じわじわと迫ってくるような精神的恐怖」の方がテイストとしてはあっているのね。

特にタイトルにもある「祖母の部屋(家)」って、先日観た「みなに幸あれ」にも通ずる、漠然とした異世界間(異質感)っていうものがあって、幼少期に何となく怖く感じてしまう人も少なくないと思うのよ。
それこそ、普段あまり立ち入らないような仏間とか、客間とか。
僕はお祖母ちゃんの家はよく行ってたから全然慣れていた方だけど、それでも「仏間」とお祖母ちゃんの部屋に飾られていた日本人形だけはちょっと苦手だった。

そんな感じで、日本のホラーの怖さって「目に見えないけど、何故か感じる」っていうのが、一つのフォーマットだったような気がするんだけど、やっぱり「貞子」や「伽椰子」がいつの間にか「大量消費型のキャラクター」として雑に扱われ始めてから、Jホラー自体も「感じるホラー」から「視覚的に見るホラー」にシフトしてしまったような気がするんですね。

で、そんな「最近のJホラー」をベースにショートを作ろうとすると、結果的にこういう作品が生まれるっていう事だと思います。

勿論、「リング」だって「呪怨」だって、最終的に貞子や伽椰子が出てきて「うわっ、怖!」ってなるんだけど、そこに至る「起承転」があっての「結」っていうのがあったはずなんですが、きっと昨今の「ファスト文化」というか、ジワジワと「起承転」までを楽しむ余裕が失われてきてるのかもな・・・なんて思うわけです。
「もう結論だけ観れればいいや」みたいな。

所詮、短編なんだから「起承転結」の全部は描けないよ…となるかもしれませんが、そこじゃないんだよな~。
短編には短編のセオリーってのもあると思うし、あえて「描かない部分」を余韻として残して、観た人が尺の続きの物語を自分で膨らませるっていう作り方(楽しみ方)もあると思うんですね。


この作品自体が駄作か?というと、僕はそこまで思いません。
ただ、ここが「Jホラーの現在位置」なんだなって感じることが出来た作品って言えばいいかな。

作品の完成度云々ではなく、何故最近のJホラーがつまらなくなったのか?という理由の一端を垣間見たような気がしました。
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